ゲーム感想「棄海：忘れられた深海都市」

2023年4月2日

2021年11月にリリースされた2Dメトロイドヴァニア。開発は台湾の光穹ゲーム（18Light Game）株式会社。ちょうどNintendo Switch版が2023年3月に配信開始されたが、セールだったのでSteam版を購入しプレイ。

ストーリー

400年後の未来。人類は海中へと進出し、数百の町を連結させた巨大な「新アトランティス」を築き上げていた。あるときその中の一つである深海都市ロイラは海洋廃棄物と融合したモンスターと、それを率いる巨大魚ラクシャに襲撃され壊滅的なダメージを受け廃墟としてしまう。時が経ち、破壊を逃れたアウトポスト（都市部から離れた中継地）で目覚めたプランティーは、深海を守るガーディアンの新兵としてパートナーとなるメカジキロボットのブラントとともに訓練を行っていた。しかし現れたラクシャによってプランティーの棲家だったアウトポストが破壊される。プランティーとブラントは、ラクシャと戦うためにロイラを冒険することになる……というのが導入部。

感想

本作は海底がロケーションのため横スクロール360度シューティングとなっているのが最大の特徴。攻撃手段は、なんと「ジャベリン型メカジキロボット」のブラント。プランティーが指示した方向に向かって突撃し、対象にダメージを与える。プランティーとブラントの座標は別々で、プランティーが攻撃指示を行うとブラントはプランティーからではなく自身の座標から指示方向へ向かう。まさに一本のジャベリンが何度も敵を貫くような見た目で、なかなかユニークなものになっている。

操作感はこの手のゲームとしてはわりと新鮮で、そこそこ直感的。最初は慣れないかもしれないが精密な操作もそこまで求められないようになっているのでストレスは感じないと思う。また「パワークラッシュ」というアビリティを取ることで、チャージ行動の際に自機の周囲を回転するシールドとしても機能する。シールドには耐久値があり、これを超えるとブラントがオーバーヒートしてしまうのでそこらへんの管理も重要。これがリスク・リターンのバランスがよく、遊んでいてかなり心地よかった。ボス戦は難易度普通だとそこそこ歯応えがあるが、デスペナルティーもないので気楽にリトライできる。
メトロイドヴァニアとしての探索要素は比較的優しめ。探索要素が残されているかはマップの色で判別もでき、種類は少ないがマーカーを設置することも可能。浮遊アクションであるため、いわゆるジャンプがある「地上型」メトロイドヴァニアと得られる能力のレパートリーが異なるものの、美味しい部分はしっかり押さえられている。カートゥーン調な絵柄や、メモリーボードによる強化カスタマイズといったゲームデザインなどはインディー・メトロイドヴァニアの傑作「Hollow Knight」を彷彿とさせるが、アートワークもよいしクオリティは高い。
あとは個人的に自キャラのプランティーが可愛くてよかった。彼（彼女？）は基本的に喋らず、相棒でもあるメカジキ型ロボットのブラントの言葉に対し、うなずいたり微笑んだりするのだが、これがなかなか表情豊かでほっこりするのだ。

また、重要なシーンで差し込まれるアメコミ調のカットシーンも力が入っている。言語設定が日本語だと擬音など英語のままだったが（PC版）、何をしているかなどで困ることはないと思う。途中までは「それはゲーム本編のアクションとしてやったほうがよいのでは……」という演出までやっていてちょっと微妙かもと思っていたのだが、後半の物語の革新に迫るイベントなどからは普通に見入ってしまう出来。もともとデフォルメされたキャラクターがさらに表情豊かに描かれ、すっとストーリーが入ってくる。お話もわかりやすく、絵本のような絵柄の効果もあってちょっと感動してしまうくらいには最近遊んだメトロイドヴァニアの中でも良かった。

まとめ

というわけで、キャッチーな絵柄とわかりやすいストーリー、そして遊びやすくも珍しい海中シューティング・メトロイドヴァニア。これといった問題点もなく、ゲームとしての難易度や新鮮さ、ライト感などふくめてメトロイドヴァニアの中でもおすすめしやすい作品。ちなみにPC版だと水色の半魚人っぽい見た目だが、Switch版では赤いウミウシっぽい専用のオリジナルスキンがデフォルトになっている（PC版も選べる模様）。お好きな方でどうぞ。

_{画像：© 18Light Game Ltd.}

PC版（Steam）
https://store.steampowered.com/app/1286280/_/?l=japanese

Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000057979.html