ゲーム感想「メトロイドプライム4 ビヨンド」

2025年12月にリリースされた、Nintendo Switch / Nintendo Switch2用の一人称視点の探索シューター。任天堂が誇るIPの一つ「メトロイド」シリーズから派生した「メトロイドプライム」シリーズの、外伝を除けば4作目。「プライム」シリーズは本家シリーズとは異なり、基本は一人称視点でゲームが進行するのが特徴。ただしプレイヤーの状況によって三人称や見下ろし、あるいは2Dスクロールモードにもなる。本作は「メトロイドプライム3 コラプション」から実に18年、開発が発表されてから8年という長期間を経てリリースされた。私はスイッチ2エディションでプレイ。

今回のメインとなるヴァイオラスーツ。赤黒に紫のラインがかっこいい。

ストーリー

コスモ歴20X9年。バウンティハンター、サムス・アランは、スペースパイレーツ軍に襲撃を受けた銀河連邦UTO研究所からの救援要請を受け、惑星タナマールへと向かう。スペースパイレーツを率いるのは、銀河連邦とサムスに恨みを持つバウンティハンター、サイラックス。彼は意識を支配する力を得た「サイラックス・メトロイド」を使役してスペースパイレーツを洗脳し、銀河連邦の技術を奪うため研究所を襲っていたのだ。サイラックスとの交戦中、研究所が発見した古代遺物が作動し、その場にいたサムスや銀河連邦兵、サイラックスは、タナマールから遠く離れた惑星ビューロスへと飛ばされてしまうのだった……というのが冒頭の話。

感想

私は2023年の「メトロイドプライム リマスタード」以外のシリーズは未プレイなので、「プライム」シリーズは初代とこの本作しか遊んでいないのだけど、基本的な部分は大きく変わってはいない。純粋なFPSというよりは一人称アドベンチャーシューターであり、シューティング戦闘だけではなく周囲を「スキャン」して攻略情報を読み取ったり、スキャンによってオブジェクトなどを操作したりしながら、「メトロイド」シリーズのサムスらしいモーフボールへの変身やミサイル、グラップリングフックといった能力を使って障害を打破していくことになる。

本作のシューター要素にはロック機能があり、一般的なFPSのようにしっかりとレティクル(弾が飛んでいく照準)を操作しなくても敵を狙える。またそもそもサムスのエネルギー弾は遅めのため、動く敵に関してはロックなしでは狙いづらい。割とそのあたりは補助輪がついているというか、ゲーム側でサポートされている。FPSが苦手な人でも……というか通常のFPSと勝手が違うので、ある意味クセのある操作感ともいえる。
ゲーム自体の難易度はノーマルでクリアしたものの、ラストバトルを除けばそこまで苦戦はしない(ラストバトルだけは何度もやられた)。ただボスなどは急に行動を変えると今までの攻撃が通じなくなったり、回避方法を知らないと手痛い攻撃をもらい続けたりといった状況になりかねないので、とにかくスキャンであったり周囲のものや敵の挙動をよく見て戦う必要がある。

私が今作で気になっていたのは、ジョイコンのマウス持ちによるゲーム操作。
スイッチ2エディションでは右ジョイコン2をマウスモードにすることで、いわゆる「キーマウ(キーボード&マウス)」に近い、PCゲームでFPSを行うような操作モードにすることができる(とはいえ左手はジョイコンだけど)。面白いのはこれをゲーム中シームレスに切り替えられること。これはけっこう未来感があってよいなと思った。
実際にところどころでマウスモードを使ってやってみた感想としては……「最初は難しい」という感想に落ち着いた。というのも初期設定でのマウス操作感度が個人的に高すぎて、めちゃくちゃ画面が動くのでやってられたものではなかったからだ。これに関してのオプション誘導はゲーム中一切なかったと思うので、マウスモードで遊びたい人は自分でちょうどいい塩梅を探すのをおすすめする。ここを調整すると、だいぶ視点移動などもしっくりくるようになった。

オプション。本体のマウス設定にも設定項目があるようだが、
個人的にはゲーム内のマウス反応速度の数値を落とすだけでだいぶ遊びやすくなった。

あとはこれはゲームがというよりハード自体の問題なのだけど、ジョイコンをマウス持ちするというのがちょっとやっただけでは安定せず、手に馴染むまで慣れがいるということ。個人的には親指の置き場に困った。マウス持ちでABXYボタンを押す事も含め、結論「ちょっと慣れがいる」と思う。慣れたらノーロック移動撃ちなどかなり快適そうではあった。

今作のギミック的な特徴としては、サムスは惑星ビューロスの古代人、ラモーン人の遺産であるクリスタルの力を取り込み、サイキック能力に目覚める。その中でも「コントロールビーム」という、撃ったサイキック弾を自分で操作することができるショットはかなり面白い試みだったと思う。ショットを放つとゲーム中のあらゆる挙動がゆっくりになるので、プレイヤーは弾の操作に集中できる。また弾は多少の貫通力を持ち、位置がばらばらな複数のターゲットを一発の弾で倒す、という芸当(というかそれをしないといけない場面)も可能。
通常の直線に撃つショットでは当てられない位置のスイッチなどに干渉したり、決して背中を見せない、正面の装甲が厚い敵に対して弾を裏側から当てたりなどこの遊びならではのギミックも多く、遊びとしてはかなり好印象。離れた位置の状況を知りたいときに斥候のように使うこともできるため、探索でも戦闘でも使える良いギミックだった。

コントロールビーム。標的によっては小さくて当てにくいこともある。
これはマウスよりアナログスティックの方がやりやすかった(右でも左でも操作可能)。

他にも、モーフボール時に使えるボムを念力で掴んで射出できるといった今作ならではの要素がある。こちらは事前にボムを射出して、サイキックスキャンして……と手間がかかるため、用途としてはギミック攻略寄りだったように思う。

遊んでいて気になった点として、ゲーム全体のマップ構成が挙げられる。
本作のマップは広いベースとなる箱庭フィールドがあり、その中で拠点としてダンジョンエリアが複数存在する。同社の作品でいう「ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド」のような構成。
はっきりいって、これは微妙に感じた。「メトロイド」シリーズは、ゲーム開始地点からアイテムを手に入れ敵を退けながら、密度の濃いマップを奥へ奥へと進み、少しずつ行動範囲を広げていく楽しさがあった。ゲーム序盤に見える景色や場所と、中盤や終盤のそれは明確に異なっていてこそ、よくぞ遠くまできたもんだと感慨に浸れてよかったと思うのだが、本作にはそれが感じられなかった。「ブレワイ」は箱庭フィールドそれ自体が巨大なダンジョンとして機能していたのだが、本作のそれはただ一面の砂漠であり、ダンジョンとダンジョンをつなぐハブとしての役割しかないように感じられた。
もちろん、ダンジョンエリアをクリアすることで新たな能力や武器を手に入れていく快感はあるし、その各ダンジョン自体のマップ構造は従来のメトロイドと同様、よく練られていて楽しかった。閃きで障害を打破していく面白さはこれぞメトロイドといったところで、遊び甲斐が感じられるものだったと思う。
しかしゲーム全体で見ると、先へ進んだという実感がわきづらい。これには「ハブ」的役割として、行ける場所にほとんど制限がないのも理由の一つだと思う。たとえるなら、ゲームが進んでも変わらずただ同じ広い部屋で鍵を探し続けているような感覚に近かったように思う。
ストーリーについても、この惑星で何が起こったのか明らかになっていくのに対しそれが敵となるサイラックスとの確執とほぼというか一切結びつかないのは勿体ない。あとはラストがね……プレイヤーの死闘の結果を無にしてまでそんなことしなくてよくね? と思ってしまった。

まとめ

というわけで、満を持して登場した色々と挑戦的な探索アドベンチャー。8年の歳月をかけ、途中仕切り直しになり開発会社も変えて完成までこぎつけたという、苦労の跡がうかがえる作品。残念に感じた部分もあるが、キモである探索アドベンチャー部分は本編や従来作通りに面白く洗練され、本作ならではの趣向もある。個人的に、ジョイコンモードとマウスモードの切り替えはスイッチ2を持っているならぜひ試してもらいたいと思った。

公式サイト
https://www.nintendo.com/jp/games/switch2/bgw5a/index.html