映画感想「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」

2024年公開の香港アクション映画。監督はソイ・チェン、主演はルイス・クー、レイモンド・ラム。敵役の一人としてサモ・ハン・キンポーも出演している。香港の小説家、余兒による作品「九龍城砦」が原作であり、本作はそれの映画化となっている。
アクション監督に映画「るろうに剣心」シリーズでもアクション監督を務めた谷垣健治氏が携わっている。2025年の公開当時からわりと気になっていた作品。結局劇場では観なかったのだけど、Amazon Prime Videoで配信されたので視聴。

ストーリー

九龍城砦――20世紀の香港にかつて存在した無政府状態の区域を巡り、かつて黒社会(犯罪組織)勢力による抗争が繰り広げられていた。最大勢力だった雷震東(ロイ・ジャンドン)は、「殺人王」と呼ばれる冷酷な男、陳占(チャン・ジム)を使い城砦に君臨していたが、「竜巻」の異名を持つ龍捲風(ロン・ギュンフォン)によって陳占は倒され、戦いは終わった。
そして1980年代。城砦からは退いたが未だ黒社会の大物である雷が仕切る格闘技場で、密入国者の陳洛軍(チャン・ロッグワン)は戦っていた。手下になれという雷の誘いを洛軍は断り、ファイトマネーを要求する。彼が戦う理由は偽造身分証を手に入れ、真っ当な香港人になること。代わりに身分証を用意してやると言われた洛軍だが、渡されたのは明らかに粗悪で使い物にならない身分証だった。逆上した洛軍は麻薬の入った袋を奪って逃走する。彼が逃げ込んだ先は、龍捲風が取り仕切る九龍城砦だった……というのが冒頭の流れ。

感想

面白かった。九龍城砦で功夫アクション、という時点ですでにハートをつかまれているのだけど、そこにしっかり友情、師弟愛といった往年の香港功夫映画を思わせるものが詰まっている。
九龍城砦という場所は、ある年代の人間にとってはかなりロマンを感じる場所だ。所狭しと建てられた違法建築が一つの建造物として認識されるというのは面白く、私より上の年代の方の中には実際に旅行で訪れた方もおり、私も体験記を読んだり写真集を買ったりするくらいには好きである。最近は減ったが昔はゲームのロケーションとしてフィーチャーされることもそこそこあった。劇中で描かれる人々の生活も、龍捲風に守られながら助け合って……というのはフィクションにしてもおおむねイメージから乖離はなく、魅力がよく表現されていると感じた。

意外だったのは、ストーリーがシンプルかつ上手くまとまっているところ。ここは正直そんな期待していなかった。とくに序盤から中盤にかけての、洛軍がどんどん城砦での生活に馴染んでいくパートが微笑ましくてよかった。身寄りのなかった彼にとって、ぶっきらぼうながら色々と世話してくれる龍捲風やその手下たちが家族になっていき、大切なものになっていくというのはすっと入ってきやすい。
最初は登場人物が多くて混乱したが、徐々に誰がどういう立場なのかわかってくる。洛軍と同じ年代の若者たちとの絆や、その全員が龍兄貴と呼んで尊敬する捲風もまたかっこいい。
本作の主役は洛軍と捲風であり、洛軍のパートとは別に龍捲風視点で語られる黒社会とのやり取りや、過去の因縁を彷彿させるパートがある。それらが後半で一つに繋がっていくという、王道ながら無駄がない物語展開だと感じた。
また功夫映画としても見やすく、アクションも懐かしさとスタイリッシュさが同居していて飽きない。ちょっと全体的に忙し過ぎるきらいもあるが、ちゃんと九龍城砦の狭く立体的なロケーションを使った殺陣になっている。また功夫映画でお馴染み(?)な、「一見ただの○○が実は功夫の達人」といったお約束も入っている。まああからさま過ぎて意外性はないけど、ちゃんと見せ場になっているのでヨシ。

公式サイトより、床屋のおっちゃんかと思ったら伝説の最強拳法家だった、龍捲風。
ヤクザ的な兄貴というよりは師父的な側面が強く、そこもまた功夫映画や武侠小説っぽくてよいのだ。

といった具合に非常に満足していたのだけど、最後に立ちはだかる敵の存在に関しては正直けっこう白けてしまった。それなりにちゃんと功夫アクション映画だと思って観ていたのにいきなりファンタジーになったような感覚といえばいいだろうか。
私は途中で映画のジャンル自体がチェンジする「ジャンルシフト映画」が好きなんだけど、これは別にシフトを狙っているわけではないし、私が好きなそうした作品は一応それ自体が見所だったり、ジャンルが変わるにしてもそうなる理屈というものがあって、納得できるものになっていたと思う。まあそのジャッジ自体お前の匙加減だろうと言われたらその通りだとして、本作に関してはそれまで真面目に取り組んできたのに、最後を悪ふざけで誤魔化されたように感じてしまったのだ。
一応原作者のインタビューによると、ここは多少の設定違いはあれど原作でもそうなっているらしく、仮に原作通りの説明をされても納得はできなかったと思う。ただ記事を読んだ限り、これはどこまでを「功夫」に含めるかの解釈の違いもあるのかもなあと思った。

まとめ

というわけで、九龍城砦で功夫アクションを繰り広げるという、ある年代垂涎な作品。男同士の友情や復讐、野心、忠義、使命などもしっかり描かれており、何より龍兄貴がカッコよすぎる。吹き替えが堀内賢雄氏なのも渋い。こうしたド直球な功夫映画はなかなか作られないし、期待した通りのモノがちゃんと出てくると思うのでぜひ。

Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0FP97MTND

公式サイト
https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/

『九龍城砦』著者・余兒インタビュー。作品の誕生秘話と映画キャスティングへの想い ananweb
https://ananweb.jp/categories/entertainment/66518