ゲーム感想「Hollow Knight: Silksong」
2025年9月にリリースされた2D探索アクション。オーストラリアのスタジオTeam Cherry開発、販売で、傑作メトロイドヴァニア「Hollow Knight」の続編。前作でも登場したキャラクター「ホーネット」が主人公となり、新たな王国を舞台に過酷な冒険を繰り広げる。プラットフォームは現行機のほとんどで遊ぶことができる。自分はPC(Steam)版でプレイし、真エンドまで到達。
ストーリー
ムシたちが暮らす世界。女戦士ホーネットはヴェールをかぶった謎の集団に捕らえられ、檻付きの馬車で護送されていた。捕らえられる理由に覚えはない彼女だが、自身の血に流れるシルクの力を使い捕縛から逃れる。地下深くに落下したホーネットは道中に老婆と出会い、ここがシルクと歌の王国ファールームであることを知る。いわく、ヴェールの集団は王国の頂にそびえる聖地シタデルのムシであり、ファールームの信仰、あるいはもっと恐るべき何かに仕えているという。ホーネットは己が連れてこられた理由を知るため、シタデルを目指す……というのが冒頭。
感想
遊んだ所感としては、改良された部分もありつつも本当に「前作と変わらぬ味」をお出ししてきたという印象。
自機アクションも攻撃を当てたときのノックバックなどクセのある手触りは相変わらず。攻撃することでシルク(前作のソウルに相当するもの)がたまっていき、一定値消費でHP回復が可能。この「回復するには攻撃しないといけない」というストイックさはまさにホロウナイト。前作の「器に液状のソウルがたまっていく」UIとは異なり、糸巻き型のメモリになっているので前作よりわかりやすい。シルクは回復のほか、強力な「シルクスキル」を使うことができる。シルクスキルは周囲にシルクの糸を放つ範囲攻撃や、相手の攻撃を受けて反撃する当身技などいくつか種類がある。
また冒険を進めることで手に入る能力もかなり移動の手助けをするものが多く、ただ行動範囲が広がるだけでなくバトルの幅が広がるようにもなっているのは流石。ダッシュなどは前作より使い勝手がよく改良されているのも良き。
前作から大きく変わった点でいうと自キャラのカスタマイズ周り。本作では「クレスト」とよばれるアクションと装備スロットが一体化した流派のようなものを切り替えることが可能。これにより初期の素早い攻撃が力強い振りになったり自身の爪で戦ったり、果てはドリルになったりと基本アクションの遊び心地を変えることができる。また後述する道具や支援などのスロット種別も変化する。私は「狩猟者」(初期クレスト)メインだったが、途中で取得できる前作主人公の「放浪者」タイプなんかはかなり遊びやすそうだと思った。

力を紡ぐ(回復)行動の際に特殊効果が付与されるものもある。攻略の幅は広い。
変更点のもう一つは道具が追加されたこと。正統派の投擲物からトラップなどの変化球、さらに自身を強化するバフ系まで様々。これをクレストのスロットに装備することで使用可能になる。個人的には「刺殺のトゲ」という設置罠が序盤から終盤までかなり役に立った。シリーズの特徴として空中を浮遊する敵が多いのだが、この武器は空中に機雷のように置くことができるので汎用性が高い。
また前作の強化要素だった「チャーム」は廃止されこのクレストスロットに統合されており、道具だけでなくステータスに変化を及ぼす支援系のアクセサリも装備できる。おすすめは「ポリップのポーチ」で、装備中の道具に毒を付与する。毒は誰にでも効くので、上で挙げた「刺殺のトゲ」も強化できてかなり強いと思った。
そんな攻略の幅が広がった本作だが、難易度もパワーアップしている。
まず敵から受けるダメージが痛い。ゲーム全体としては軽い攻撃は1、重い攻撃や必殺技は2ポイントライフが減るのだけど、結構序盤からそのへんのザコ敵でも一撃で2ポイントが減ることが多い(ホーネットの初期ライフは5)。また被弾後の無敵時間も少なめなので、気がつくとあっという間に態勢が崩れやられてしまう。
さらに本作は閉じ込められた状態で上記性能のザコ敵が集団で襲い掛かってくるシチュエーションがかなり多い。ザコ敵の集団攻撃はランダム要素が高くリトライしても安定しないので、ボスの難しさとは別のストレスを感じた。
そしてボス戦については、前作を傑作たらしめたのはこのボス戦の楽しさにあると思うほど、今作も素晴らしい。ホロウナイトのアクションは自機も敵も隙が少なく非常にスピーディで回避と攻撃の応酬が本当に心地よく、死闘感を味わうことができる。攻撃はもちろん激しいのだけど、大半が避け方――つまり正解の行動がわかりやすいよう工夫されているので、適応はしやすいと感じた。こうした正解を積み重ねていくのが上達のバロメーターとしてわかりやすく、作り方としてなるほどと思った。個人的に好きだったのは舞踏者戦やファントム戦。ファントムは初見で動きを見切って撃破できたので嬉しかった。
ボス戦自体にはそれほど文句はないのだけど、ボスと遭遇する場所とベンチ(復帰ポイント)の距離が離れており、再戦するまで時間がかかる箇所が多々ある。この辺りは前作からまったく変わっておらず、難しさの中に不便さ、理不尽さを内包するスタイルはある意味ブレがないともいえる。
トゲなどのギミックによるプラットフォームアクションは前作と同程度で、前作でプレイヤーを苦しめた「白い宮殿」レベルのものは今作はなかったように思う。アクションの操作のしやすさも相まってこの辺りは楽しいのだけど、ザコ敵を織り交ぜてくるのでやはり難易度は高い。
世界観や物語、背景や音楽に関しては、これはもう素晴らしかった。
ムシたちの生態と過酷な生存競争を反映した世界観は前作から継承されているが、本作でよりいっそう押し広げられている。
ストーリーは表面上だけでも起こっていることは把握できるものの、正しく理解しようとすると前作同様に複雑で難解。大抵の情報は断片的で、さらにホーネットは「ニードリン」と呼ばれる針を楽器にして音を奏でる力を使うことでNPCや敵などが歌唱を行う(テキストが表示される)という、物量を考えると震えあがるようなシステムがあり、そうした情報を組み合わせると事実が浮かび上がってくるというかなりの読み込み力を要する。考察好きな方は相当楽しめると思う。
温かみのある背景ヴィジュアルももちろん素晴らしく、特に音との合わせ技がすごい。音楽は楽曲自体の良さもさることながら、地図を売ってくれるキャラクターは前作同様鼻歌で位置を知らせてくれるし、ボスが出そうなところには前段階で不安を煽るようなストリングスが入るなど、音そのものの使い方もやはり秀逸。足音といった基本的なものだけでなく、プレイヤーの行動や敵の行動、自然現象などあらゆる音が豪華で繊細に設定されている。
こうした細かな気遣いもシリーズの特徴だと感じた。

ヴィジュアルだけではこの生き生きとした空間は作れないだろう。
まとめ
というわけで、前作から変わらない味をお出ししながら世界観やアクションをより尖鋭化させた作品。6年前の発表からようやくリリースされたが、個人的には想像以上の内容で大満足。万人に薦められる難易度でないのは確かだが、個性とクオリティの高さに関しては万人を唸らせる力を持った作品だと思う。
PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/1030300/Hollow_Knight_Silksong/?l=japanese
Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000105852
Play Station
https://www.playstation.com/ja-jp/games/hollow-knight-silksong/
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