ゲーム感想「エルデンリング ナイトレイン」
2025年5月末にリリースされた協力型サバイバルアクション・ゲーム。フロム・ソフトウェア開発、バンダイナムコエンターテインメント販売。全世界で3000万本以上を売り上げた傑作3DアクションRPG「エルデンリング」の派生作品で、直接の続編ではないものの世界観を共有している。「ナイトレイン」には遊ぶたびにマップや敵の配置、得られる装備やボスなどが変化するというローグライクゲーム要素があり、さらに1人用ではなく3人でのマルチプレイを前提とした作りになっている。プラットフォームはPS5/4、Xbox Series、PC。私はPC(Steam)版をプレイ。
ストーリー
狭間の地リムベルドは、「夜の王」と呼ばれる脅威によって危機に瀕していた。かつて大地に祝福をもたらした黄金樹も「夜の雨」に呑まれて姿を消し、すべては衰滅の一途を辿っている。そんな中、ぼろぼろの円卓には各地から集められた「夜渡り」と呼ばれる戦士たちが集結していた。円卓にいる巫女の話では、夜渡りたちには夜の王を狩る力があるという。プレイヤーは夜渡りの1人となり、夜の王を倒すためリムベルドへと出立する……というのが大枠の話。
感想
かなり熱中して遊んでいる。エルデンリング本編ほどではないものの、それでも流石フロム・ソフトウェアといった中毒性がある作品であることは間違いない。
まず、ゲームの作り方が非常に合理的だと感じた。本編の敵やアイテム、グラフィック、音楽といった様々な素材を流用し、それを使って新しいゲームルールやシステムを作るというのは、それらを一からすべて作るよりコスト面の負担が少ないことは明らか。また本編を遊んだプレイヤーからすると、武器の性能や効果、敵の挙動など本編の知識や経験がプラスに働くのも地味に嬉しい。
もちろんプレイの3日目に訪れる最後のボス「夜の王」は本作完全新規のボス。マルチ前提で作られているので攻撃範囲などより苛烈で、倒し方や戦術などもそれぞれ個性的で、何度も戦っていて楽しい、エルデン本編の「デミゴッド」レベルでかなり作り込まれていると感じた。

3対1と数的にプレイヤー側は有利だが、相手はどれもその数差を覆す強さを秘めている。
ゲームの流れは、ストーリーでも触れた夜渡りの1人として3人1組でリムベルドの地に降り立ち、そこで1日目、2日目を通して武器アイテムを集めたり自キャラをレベルアップさせたりなどでキャラクターを強化、3日目に出現する「夜の王」を倒すのが大目的となる。
1日目、2日目はマップの外側から徐々に「夜の雨」が迫り、雨に呑まれたエリアにいるとダメージを受けるようになる。1日目の最後に現れる中ボスを倒すと、一時的に夜の雨を押し返すことができ、再び探索が可能になる。2日目のボスを倒すと「夜の王」が待つエリアに繋がる扉のようなものが現れ、その先で最後のボス戦になるので、実質マップ探索ができるのは2日間のみ。
遊んでいくうちに感じたのは、「ダークソウル」シリーズに代表されるフロム産高難度アクションゲームを「ローグライク」という異なるゲームジャンルにきっちり落とし込んでいるということ。
まず、移動の快適さの向上が挙げられる。本編や「ソウル」シリーズはでは、キャラクターの挙動は良くいえばリアリティがあり、悪くいえばもっさりしている(それでもエルデンリングはかなり動かしやすいが)。本作はそこにさらに改良を加え、高い段差を移動できる壁ジャンプやよじ登り、通常ダッシュより更に早い疾走、落下ダメージの廃止など、時間が重要な本作に適応させている。
そして、個人的にはとくに固定化とランダム性についての取捨選択がうまいなあと感じた。
ローグライクと聞くと、遊ぶたびにまったく違うマップ構造になるイメージだが、実は本作の舞台となるフィールド地形は基本的に1種類(+地変の数)しかなく、その上に配置される敵がいる砦や野営地、回復回数を増やす教会といった拠点の位置が毎回変更する仕組みになっている。その砦や野営地も、場所こそ毎回違えど内部構造も拠点ボスによって固定化されており、それらを覚えさえすれば、マップを見ただけでどこに何があるか(いるか)、何をすればいいかといったことが事前にある程度わかるようになっている。

土台は変わらないが配置は変わるので「地形のあの位置にあれがある」などマップで確認できる。
これはいわゆる「フロムゲー」が死に覚えを前提としたアクションゲームであり、リトライと試行錯誤を繰り返して攻略するゲームだからだと思われる。技術介入部分が大きいため、しっかりキャラを強化し良い武器などを手に入れるというローグライクにおいて有利な状態に持ち込めたとしても、プレイヤースキル次第では最終日のボスに負ける可能性は全然あるのだ。
そのプレイヤースキルを上達させるにはある程度リトライできる環境が必要があるし、むしろその上達がフロムゲーとしての楽しさに繋がっている。とはいえ、体験を固定化させることと毎回体験が異なるローグライクと呼ばれるジャンル自体は本来食い合わせが悪い。
フィールドの地形や拠点構造が固定化されているのは、単純に「毎回異なる構造のフィールド、拠点を冒険する」というリプレイ性ではなく、「同じフィールド土台に毎回異なった場所に振り分けられる拠点をどう攻略するか」というルート取りでのリプレイ性を選んだからだろう。後者を採用したことで、フロムゲーの面白さである固定化された要素を巧くクリアする楽しさも確保したというわけである。
こうして見ると、ただ高難度にするのではなく、それをどうクリアさせるかについて本編同様にやはり気を遣っているんだなと感じた。
ただ、本編と同じような楽しみ方ができるかというとそれはまた別のお話。事前に判明している通りに自分の分身キャラクターを作って世界や物語の中に入り込むといった遊び方はできないし、多少のハクスラ要素はあるものの本編のような「勝利、攻略を蓄積させていく」面白さも正直実感はしにくい。
またマルチではある程度協調性を求められる部分も含め、マイペースに高難度を味わいながら攻略するような遊び方は正直本作に向いていないと感じた。まあソロプレイもできるのでまったくく遊べないわけではないが、先述したように没入感やストーリーだけを求めるとあまり満足できないとは思う。
まとめ
というわけで、エルデンリングから遊び方とジャンルを変えながらも高水準に仕上げた野心作。リトライできる環境を残しつつ毎回異なるリプレイ性を担保するという、ある意味で正反対のことをやってのけているのは凄いと思うし、しっかりフロムお家芸の高難度アクションとして面白いのも流石。
あと個人的には夜の王のBGMがどれも格好良いのもグッド。お気に入りは夜の王「リブラ」「カリゴ」だが、とくにカリゴの方は本作どころか本編を含めても屈指の美しさだと思う。
公式サイト
https://nightreign.eldenring.jp/index.html
PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/2622380/ELDEN_RING_NIGHTREIGN/?l=japanese
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