ゲーム感想「星のカービィ ディスカバリー」

2022年3月に発売されたアクションゲーム。Nintendo Switch専用ソフトで、HAL研究所開発。「星のカービィ」シリーズ最新作。カービィといえば「スマブラ」シリーズなどにも登場する、ゲームをあまりやらない人でも知っているレベルで有名な任天堂キャラクター。なんとシリーズ30周年だそうである。派生作品を含めるとかなりの数があるのだが、本作は意外にもシリーズ初の3Dアクションということになっている。

冒頭、平和なポップスターを散歩するカービィ。そのとき暗雲の先に空間の裂け目のようなものが生じると、ポップスターの様々なものを吸い込んでしまう。カービィも巻き込まれて裂け目の中に呑み込まれてしまうのだが、その先で目を冷ますといつもと違う風景が広がっていた。崩壊して久しい見たことのない建物、そして一緒に吸い込まれたワドルディたちをさらうナゾのビーストたち。カービィは、そのビーストたちから狙われるエフィリンという不思議な仲間とともに、ワドルディたちを解放するためにナゾの世界を冒険するのだった。

ワドルディたち。かわいい。公式ポータルサイトによると、
「プププランドに住む不思議な生き物で、ザコ中のザコ」らしい。でも今作では救出対象。

遊んだ印象としてそのゲームシステムは「マリオ3Dワールド」同様、ワールドマップを移動し点在するアクションステージを選択、アクションステージをクリアしていくというスタイル。元々カービィはこの流れだったので特に違和感はない。ステージ中はただゴールを目指すだけでなく、そのステージごとに設定されたお題をクリアしたり、随所にいるカゴに閉じ込められたワドルディを助けたりしながら進んでいく。難易度は「ワイルド」と「はるかぜ」の2種類選べるが、ワイルドモードでも序盤はかなり優しめで、じっくりゲームに慣れていくことができる。後半ではそれなりの歯ごたえ(でも温情がある)で、こちらも万人向けのバランスといった印象。
救出したワドルディたちは町を築いており、人数が増えると武器屋(コピー能力を強化できる)やアイテムを購入できるショップ、ちょっとしたミニゲームなどどんどん施設が解放されていく。このあたりは手堅い作り。エリアボスのステージは、そのエリアで助けたワドルディの数が鍵になっており、一定数を満たしていると大量のワドルディたちがぼこすか門を殴って開けてくれる。演出としてはほんの一瞬だが、こういうワラワラした画は見ていて癒やされる(そういえば「あつめてカービィ」なんて作品もあったなぁ)。

本作で特に目を引くのは、ロケーション設定だろう。カービィが時空の裂け目で連れてこられたのは、自然と同化した文明崩壊後の現実世界のような場所となっている。「スーパーマリオオデッセイ」でも摩天楼の世界があって驚いたが、違和感とともにそれまでと違う冒険を予感させ、刷新という意味では良いアイデア。グラフィックは敵もカービィも相変わらず丸っこくて安心するデザインなのだが、現実世界にあるもののデザインや描き込みはそこから乖離しない範囲でリアル調。質感を持たせつつも、デフォルメ特有の温かみがあって画面を壊さない良いバランスだと思う。

本作を象徴する、自然に侵食されたビル群とカービィの図。
見た目はカービィ世界になじんでいながらも、どこか異質でワクワクする。

また、ロケーションに合わせた今作独自の仕様「ほおばりヘンケイ」も面白かった。カービィの代名詞といえば、吸い込んだ相手の技や特性を使用できるコピー能力だが、今作はなんと現実世界にある車などを吸い込めるようになっている。ほおばりヘンケイはそれぞれできることや動きがユニークで、初見では「これほおばるんだ」「こんな使い方するんだ」という面白さを発見のたびに味わえる。コピー能力と違って別のステージに持ち越すことはできないのだが、それぞれのほおばりヘンケイはステージギミックと結びついており、どうやって遊ばせるかがはっきりしているので同じヘンケイでもステージで違った体験ができるように設計されている。一つ一つのステージごとにコンセプトがはっきりしており、そこ専用の仕掛けやデザインも多く、かなり豪華に作られている。とはいってもこちらのやることや考えることは増えておらず、それでも「また似たようなステージか」になっていないのは凄いと思った。
ひとつ惜しいと思った点は、隠された収集品やワドルディを見つけるのに必要な方法のほとんどは手前に配置されている敵のコピー能力が必要だったりするので、自分の好きなコピー能力一本でいこうとするとそれらを取り逃すことになってしまうところ。まあ、そこにない能力が必要なのもそれはそれでかなり労力を伴うので、トレードオフといえばそれまでだが。

というわけで、人気シリーズに相応しい非常に安定した遊び心地の作品。要素、難易度、デザインのすべてがバランスがよく、ここまで調整するのは相当時間をかけたか、カービィをわかっている手練の職人技ではないかと。おすそわけプレイにも対応しており、遊ぶ対象(親子や兄弟)のことを考えているところも流石。クリアするだけならあっさり目だが、クリア後要素などもありコンプリートを目指そうとするとやり応えは十分。取得状況などもわかりやすく明示されるので、やり込み勢にとってもありがたい作りだと思った。

画像:https://www.igdb.com/games/kirby-and-the-forgotten-land/presskit

公式サイト
https://www.nintendo.co.jp/switch/arzga/index.html