ゲーム感想「アフターイメージ」

2023年4月にリリースされたメトロイドヴァニア。Modus Games販売、Aurogon Shanghai開発。Steamサマーセールで購入した作品。PCの他、Nintendo Switch、PlayStation Store, Xboxなどでも発売されている。

ストーリー

神によって創られた世界「庭園」。庭園には、神の御命でその秩序を守る巨人と、彼らと共存し繁栄する人間がいた。しかし人間はその傲慢さから神や巨人が持つ力を欲し、巨人に戦いを挑む。人間は戦いに勝つために、魂が行き着く先「魂の海」と庭園とを繋いでしまうがそれにより大爆発が発生。庭園の大部分は崩壊し、戦いは終わった。
それから数年後。先の大爆発から記憶を失った少女ライネは相棒である使い魔? のイフとともに、自身を受け入れてくれた村のために働いていた。大爆発以降、放置された死体は本能のままに動き襲いかかる「はぐれ者」になるため、遺体を見つけたら「虹骨」と呼ばれる結晶に変換する必要がある。なぜかその力を使えたライネは、村の周囲を巡回しはぐれ者の排除と死体の虹骨化を行っていた。しかし、突如強大な力を持つはぐれ者に村が襲われ、ライネの親代わりであり魔術の師でもあったアロスが黒いフードをかぶった魔術師により魂を奪われてしまう。彼女は師匠の魂を取り戻すため、イフとともにその魔術師を追って崩壊した庭園を冒険することになる……というのが冒頭。

感想

メトロイドヴァニアであることと、マップ背景のグラフィックが綺麗だったのでプレイしたのだが、まずそのマップの広大さに驚かされた作品。一つ一つのエリアがボリュームある上に、ロケーションも多彩かつ美麗な背景グラフィックに仕上がっている。それなりにメトロイドヴァニアを遊んできたつもりだが、本作は自分が遊んだ中でもトップクラスにマップボリュームがあった。それがまず本作最大の特徴だと思う。

様々なロケーションを冒険していくのはメトロイドヴァニアの楽しさの一つ。
グラフィックはかなり緻密で全体的にクオリティが高い。

本作を一言で言い表すなら「豪華」。前述したマップの広さ、グラフィックの良さだけでなく、アイテムやモンスターなども多種多彩、さらに日本語でフルボイス対応している点など、メトロイドヴァニアに限らず昨今のゲームに必要な要素が一通り揃っている。個人開発や小規模開発会社だと、どれかを捨てたり抑えたりといった判断をすることになりがちだが、それらが一つも欠けていないという印象。
本作は主に「キャッスルヴァニア」シリーズ(具体的には「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」以降の探索2Dアクション)のRPG的要素をベースにしている。これは装備アイテムをはじめ消耗品や素材などの「収集物」データを用意する必要があり、探索意外の面白さを付与させられる分メトロイドヴァニアの中では作るのが大変な部類。その茨の道を進みながら、ボリューム的にも不足を感じさせないレベルにまでまとめあげている。とくに装備武器に至っては剣や太刀、鞭、鎌など数種類あり、しかも武器カテゴリーだけでなく武器ごとに見た目がグラフィックに反映されるという凝り具合。
全体的なゲームデザインは「ドラキュラ月下~」の他、メトロイドヴァニアの傑作「Hollow Knight」や「Salt And Sanctuary」などの良いところを取り入れている。ゲームの操作性もとっつきやすくわかりやすい。メイン武器、サブ武器、魔法という装備枠とボタンが対応していて、それらと操作による固有技(上+攻撃とか前前+攻撃とか入力すると出る)などが発動する。ゲームが進むことで新たな能力を手に入れ、それによりそれまで行けなかった場所に到達できるようになるというメトロイドヴァニアの醍醐味ももちろん味わえる。能力は二段、三段ジャンプや地面衝撃、三角跳び、水中移動といった王道的なものが多い。
ボス戦は基本的に大半のメトロイドヴァニアと同じく「攻撃を避け攻撃を当てて倒す」を最後まで繰り返すというオーソドックスで硬派なスタイル。ボスの攻撃はかなり苛烈で難易度は高めだが、レベルを上げたり装備を揃えたりすることでゴリ押しも可能。また属性の概念もあるので、弱点を突くことで叩きを有利に進めることができる。数も多くバラエティにも富んでいるが、ボス戦がある場所というのはとくに事前の予兆などがないので、探索の最中にいきなり遭遇することが多い。地形などで判断して(すっきりした広めの場所が多い)引き返すといった判断が求められるが、これは探索の一環と取るか否かで評価が分かれるだろう。
個人的に気になった点は、広大な地形のわりにセーブポイントやファストトラベルポイントが少ない点。同じ場所、あるいは一度踏破した場所に何度も戻ることが面白さの流れの中に含まれるジャンルなので、これは正直けっこうきつかった。また目的地の確認といった誘導が少なめで、どこへ行けばよいかわからなくなる場面がちらほらあるのもきつい。これも探索の一環といえなくもないが、他の部分で「大作感」が出ているだけに不親切さが強く出てしまっていると感じた。
さらに前提となる物語の設定が特殊な上にわかりにくく、特に序盤はゲーム内のキャラクターとプレイヤーの設定理解度が乖離した状態で話が進んでいくので置いてきぼり感があるのは否めない。物語の説明で書いたような内容ははっきりとは語られず、キャラクターのセリフやアイテムの説明などから読み取る必要がある。ただゲームが進むに連れて理解の差が詰まっていき、物語の核心に迫る頃にはちゃんとついていけるようにはなっていた。複雑な設定が悪いわけではないが、根幹に関わる設定部分は厚めに補完してもよかったかも。

村の外で見つけた遺体を虹骨と呼ばれる結晶に変え、葬るライネ。
ここからの冒険で、師匠の魂を取り戻すのと同時に記憶を失った自身の秘密にも迫っていく。

まとめ

というわけで、大ボリュームという言葉に偽りのないメトロイドヴァニア。傑作たちの良いところを取り入れたゲーム性に、膨大なデータ量、操作もクセがなく取っつきやすい。その分誘導の弱さや移動の煩雑さなどメトロイドヴァニアの「苦」の部分が若干目立つが、同ジャンルのマップの広さに物足りなさを感じる人にとってはお腹いっぱい探索ができるメガ盛り飯的なゲーム。

画像:© 2023 Aurogon Shanghai.

PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/1701520/_/

Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000064529.html

PlayStation Store
https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP4735-PPSA14052_00-AFTERIMAGEBASE00

Xbox
https://www.xbox.com/ja-JP/games/store/afterimage/9N26VC8F7MZT