ゲーム感想「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」

2023年5月12日発売の、オープンワールドアクションアドベンチャーゲーム。任天堂開発、販売。2017年にNintendo Switchと同時に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の続編。

ストーリー

厄災ガノンを退けてから数年。ハイラル全体が復興に向けて進む中、リンクとゼルダは瘴気が溢れ出した原因を探るべくハイラル城の地下を調査していた。二人が城の地下で見つけたのは、かつてハイラルの民と魔族との間で起こった「魔王戦争」について記された壁画、さらに奥深くには干からびたミイラとその胸に突き刺さった何者かの右手。しかし突如そのミイラが瘴気を放って動き出し、リンクが佩びていた伝説の剣マスターソードを砕いてしまう。ミイラの瘴気によってハイラル城が浮上する中、謎の勾玉とともに姿を消したゼルダ。彼女を救おうとしたが間に合わなかったリンクは、ミイラを抑え込んでいた右手に引き上げられる。同時にハイラル各地に天変地異が発生し、上空から謎の遺跡が落下してくるほか各地で瘴気による被害や天候異常などが引き起こされていた。
リンクが目覚めると、そこは遥か天空に浮かぶ島だった。瘴気によって蝕まれた右手には、彼を引き上げた右手の装具がついている。どうやらそれによって侵食を抑え込んでいるらしい。そして彼の目の前に右手の持ち主であるラウルという人物の魂が現れる。彼に導かれながら、リンクはゼルダを探し出し世界を救うためにハイラルの大地と空を冒険する……というのが導入。

目覚めたリンクの腕に装着されていた不思議な装具。
この装具の力を蘇らせる流れが、前作の「始まりの大地」に相当するチュートリアルとなっている。

感想

変な言い回しになるが、「もう勘弁してくれ」と根をあげたくなるほど面白かった。本作は前作「ブレス オブ ザ ワイルド」(ブレワイ)がベータ版だったのかと思わせるほどさらに遊びの要素が上乗せされており、操作感などは前作そのまま、祠の探索、スキルその他を駆使した解法がいくつもある謎解き、ボス戦は健在と、前作の基礎はしっかり受け継がれている。
遊んでいてまず驚いたのが、前作と同じ「ハイラル」が舞台であるにも関わらず、実際には「同じ」とはとても言い切れないほど変化が施されていること。冒頭で発生した天変地異、また人々が築き上げた街などの変化が思った以上に大きく作用しており、同じ場所を歩いていてもけっこう印象が違うのだ。また祠の位置なども一新されていることもあって同じ土地でも攻略ルートは異なる。それでも前作知識が通じるところもあり、大体どの方向に何があったかといった情報は知見としてそのまま使えることも。前作を遊んだことのない人はそのまま新鮮なものとして受け入れられるだろうし、前作を遊んだ人もまるで何年かぶりに知った土地を訪れその変化に驚く気分を味わえる。
そして今作は前作のハイラルの大地だけではなく、パッケージにもなっているハイラル上空の世界「空域」がある。これは完全に地上とシームレスに繋がっており、大地と同じように埋め尽くされているわけではなく浮遊する島が点在している。地上に比べ目印となるオブジェクトまでの距離がかなりあるため、前作で活躍したパラセールによる滑空だけでなく後述するクラフト要素などの利用がメインになるため、地上とはまた違った探索の遊びとなっている。密度的にはそこまで高くないが、地上からしかアクセスできない場所などもあり、切り離された世界というよりは前作の世界が縦に広がったものといえる。

クラフトした動力付きグライダーで空を移動するリンク。
改めて、この画面に見える空と地上が全部シームレスだと考えるとおそろしいゲーム。

さらに空だけではなくもう一つハイラルと密接に繋がった世界があるのだが、こちらは実際に遊んで確かめて欲しい。こちらの遊びもまた地上とは違うものとなっており、その規模は地上とほぼ同等というボリュームの凄まじさ。これだけで前作を凌ぐやりごたえがあることがおわかり頂けると思う。ただ前作で感じた登場するモンスター種類の少なさも補われているものの、既視感ある敵も多くやはりこのマップボリュームからすると少なく感じてしまった(それでも前作からはかなり増えている)。

そして本作の目玉になっているのが、新しい能力によるクラフト要素。主に「ゾナウギア」と呼ばれる特殊なオブジェクトを組み合わせて、特殊な効果や駆動をする装置を作り出すことができる。本格的なクラフトゲームのような装置の導線などはなく、つなぎ方も一つを「ウルトラハンド」という能力で掴んで繋ぎたい対象に隣接させてつなげるだけ。あとはそれに衝撃(攻撃など)を与えるだけで、各装置がそれぞれの挙動をするというもの。これらは空高く上昇する、浮遊、滑空するなどリンクの移動を補助するもののほか、炎や雷、ビームなどの攻撃装置も存在する。SNSでは映画やアニメに出てきたユニークな乗り物を再現したり、自動で敵を攻撃し殲滅する巨大人型ロボをつくったりといった世界観から逸脱したものや、装置を複雑に組み合わせ常人が思いもよらない挙動をする機械などの動画がアップされている。このシンプルさでこれだけの自由度の高さを生み出しているのは、最早驚嘆するしかない。
もう一つのクラフト要素が「スクラビルド」という、武器や盾にアイテムやオブジェクトをくっつけるというもの。例えば木の槍の先端に岩をくっつけることで、それまで槍で砕けなかった鉱床を岩で砕けるようになったり、先端に魔物が落とした角をくっつけることでその角の攻撃力がプラスされたりといった、オリジナルの武器や盾を作ることができる。恐ろしいのは、ゲーム中に入手できるほとんどのアイテムや収集物に対応しているということ。鉱物や魔物の素材だけでなく、武器の先端に武器を取り付けたり、先述したゾナウギアをくっつけることでもその効果を発動させることが可能なのだ。完全に物量の遊びであり、作る側としての管理の大変さを考えるだけで苦笑いしか出てこないのだが、武器がほとんどない状態で強敵に出くわしても、持っている収集品を組み合わせることで対抗できるかもという、単にアクションだけでない気づきと発想で切り抜ける遊びを成立させているわけである。

ストーリーも前作以上にゲームの導線として強く機能している。前作はどちらかというと世界が荒廃したあとの静かな世界というか、リンクと繋がりのあった英傑たちが既に霊体化しており、ゼルダ含めて「過去にあったことを探っていく」話がメインな印象だったが、本作は前作の世界が「復興」していく様子が描かれ、全体的に世界観に活気が感じられる。前作から登場するキャラクターたちも時間が経過したことで成長や変化が見られるし、前作の神獣イベントで関わった英傑の末裔たちはよりメインストーリーに絡んでくるようになった。特に今作のラストバトルからエンディングの途中までの「セリフが一切ない」演出には唸らされた。言葉でなくても何が何なのかが伝わり画自体も神秘的でスケールも大きい、記憶に残るラストバトルだったと思う。

冒頭でのゼルダ姫。今作も例に漏れず離れ離れになってしまうのだけど、
それでも今まで以上に物語やリンクに密接に関わっている感があってよかった。

まとめ

というわけで、やることが尽きないボリュームとさらにクラフト機能を備えた、前作を超えてきた傑作。オープンワールド特有の前のめりに探索したくなる要素が満載、かつこれだけの「遊びの自由度」はこのシリーズでしか味わえないと思う。私がクリアしたときは祠も地図も埋まっていなかったのだが、どこかで自分から切り上げないと終えられないほど面白く奥深さがある、恐ろしいゲーム。

画像:Nintendo

公式サイト
https://www.nintendo.co.jp/zelda/totk/index.html