映画感想「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディーガード」

2021年公開のアクション・コメディ映画。監督はパトリック・ヒューズ。主人公の「ボディガード」をライアン・レイノルズ、「ヒットマン」をサミュエル・L・ジャクソン、そしてその妻をサルマ・ハエックが演じるほか、アントニオ・バンデラス、モーガン・フリーマンなどかなり豪華。Amazon Prime Videoにて視聴。

ストーリー

要人警護を生業としていたマイケル・ブライス(レイノルズ)は、ある事件の結果警護資格を剥奪されかかっており悪夢にうなされる日々を送っていた。セラピストは彼に警護のことを忘れて休暇を取るようすすめる。イタリアのカプリ島でくつろぎ始めた初日、マイケルは急に現れた女ソニア(サルマ・ハエック)の銃撃戦に巻き込まれてしまう。ソニアは自分の夫であるダリウス・キンケイド(サミュエル・L・ジャクソン)がマフィアに捕まってしまったから協力しろと、銃弾が飛び交う中で彼を脅迫。マイケルにとってダリウスは、自分の警護資格剥奪の原因になった人物でもあった。なぜ自分に頼むのかとソニアに尋ねると、彼女は「電話で『マイケルを呼べ』と言われた」とのこと。関わりたくないマイケルだが、強引な上気に入らない男すべてを殺しまくるソニアを制するためにも渋々ダリウス救出に協力する。一方、EUのギリシャに対する追加経済制裁が発表され、これに激怒したギリシャの愛国者で資産家の男「アリストテレス」が、欧州インフラを崩壊させるテロを企んでいた……というのが序盤。

感想

観終わってから知ったのだが、実は本作は「ヒットマンズ・ボディガード」という作品の続編となっている(日本劇場未公開、Netflix配信)。私は未見だったが特に視聴中はあまり気にならなかった。確かに人物同士の関係性などは以前から繋がりがあったように描かれているので、一応触れておく。
本作を一言で言い表すなら「お金のかかった午後ロー」という印象。やたらと俳優が豪華なのだが内容は昔ながらのB級アクションというおふざけ作品で、性質、性別の違う3人組がドタバタ劇を繰り広げながら破壊テロに巻き込まれていく。

休暇にきたはずが、ソニアに脅されマフィアのアジトにカチ込むことになったマイケル。
某マクレーン刑事のような不運さともいえる。

本作で良いと感じたのはとにかくキャラクター。とくに主演3人が個性的で良かった。ソニアの肩書は詐欺師ということなのだが、登場したときから銃を撃ちまくって大暴れするのであまり詐欺師っぽさはない。それ以上に躁病というところが彼女の特徴で、気分安定薬を常時持ち歩いておりスイッチが入ると男だろうと女だろうと関係なく殺しまくる。そんな彼女が憧れるのは子持ちの幸せな家庭、というのも笑えるところ。ダリウスはそもそも職業が殺し屋なので、無闇やたらに殺すようなことはないがその行動に躊躇はない。基本的にソニア以外のことは知ったことではないのだが、彼女に対してある秘密を抱えている。そして、マイケルが一応主人公という形なのだが、冒頭の振る舞いを見ているとただ神経質でメンタルに問題を抱えた警護バカ。それでも先述の二人がぶっ飛びすぎているうえに、彼は他の二人と違って相手を殺さずになんとかしようと立ち回るので、立ち位置的に常識人というか巻き込まれ型の主人公に見える。このイカれた殺人マシーン夫婦に常識人マイケルが振り回され散々な目に遭うわけだが、この3人のやり取りが楽しく本作のオイシイところ。多少展開が雑だったりご都合的でも気にならなかった。この空気づくりは巧い。
また、実際映画自体もこの3人の雰囲気に合わせて勢いがありとにかく目まぐるしい展開で飽きさせない。特にところどころ思い切りの良いカットもあり、例を挙げるなら車に乗って逃走するカットの直後、クラクションとハンドルにもたれかかる運転手と銃撃戦で応戦する二人というカットという、まるで2コマ漫画のようなことをやってくる。とにかくテンポ重視で「こまけぇこたぁいいんだよ!」を体現したような作りだが、それが成立するのも先述したキャラクターの性質あって許されるもの。ハチャメチャな3人組にふさわしいスピード感になっている。
そんな中にマイケルとダリウスの因縁の話、ダリウスがソニアに隠してる話、そしてマイケルがなぜボディガードに執着するのか、といったキャラクターの内面を掘り下げる話を入れ込んでくるなど、丁寧(というかあえてのベタ)な部分も。内容自体は「んなアホなw」という理由付けが多いのだけど、映画の空気感的には正解。

左からダリウス、マイケル、ソニア。
とにかく会話の理屈がぶっ飛んでいるのだが、それぞれ繊細な問題を抱えている。

そしてモーガン・フリーマンの配役も個人的には「あんたどうしてこんなバカ映画に……」とニヤニヤできるポイント。まさに無駄遣いなのだが、それでいうと映画のロケ地も同様で、イタリアのカプリ島での町中カーチェイス、崖から飛び降りて上がった先が青の洞窟など豪華。他にもトスカーナの広大な田園地帯など、旅映画で出てくるような場所や構図にも関わらず観ていて全然行きたくならない、という笑いにしている。なんというかバカアクション映画には違いないのだが、お約束を理解した頭のいい人たちが作っている感があり、しかもそれが嫌味にならないというキレッキレ具合がよかった。

まとめ

というわけで、俳優とロケ地の無駄遣いな「午後ロー」的アクション・コメディ作品。それなりに人が死に血や脳漿が飛び散るので万人におすすめはしづらいが、何も考えずに見ることができるのでそういう気分のときに見てみるとよろしいかと。キャラクターがしっかりしているので、ちょっと前作を普通に観たくなった。

画像:© 2020 Hitman Two Productions, Inc

Amazon Prime Video
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