ゲーム感想「INSCRYPTION」

2022年11月27日

2021年配信のデジタルカードゲーム。Daniel Mullins Games開発、Devolver Digital販売。「Indie World 2022」にて2022年の12月にNintendo Switch版がリリースされると紹介され気になっていたところ、既にPC版が配信されていると教えてもらったので先んじてプレイ。

あらすじ

ゲームを開始すると、「よし、内容を確認するぞ」という音声が流れ、ゲームのタイトル画面が流れる。最初はなぜかニューゲームを選ぶことが出来ずいきなりコンティニューから遊ぶことになるのだが、気がつくとテーブルとその先に目だけが見える、姿の分からない人物がいた。どうやら自分は「新しい挑戦者」であるらしい。
彼から言われるままにカードを渡されたプレイヤーは、彼がゲームマスターとなったカードゲームをやる羽目に。ゲームはカードゲームフェーズと、駒を進めるテーブルトークRPGのようなフェーズがあり、相手である謎の人物はあるときは罠漁師の、あるときは金鉱掘りの仮面をかぶりその人物になりきる。さらにプレイヤーの手持ちのカードの中にある「オコジョ」のカードの絵柄が、「お前ならボクを助けられるかもしれない」とプレイヤーに語りかけてきた。そしてプレイヤーはここが小屋の中の一室であり、ある程度は自由が与えられていることに気づく。剣呑な雰囲気のこのカードゲームに敗北すると、彼の腕が伸びてきて倉庫に放り出され、そこで写真を撮られカードにされてしまう。そしてまた新たな挑戦者としてゲームを繰り返すことになるのだった……というのが導入部分。

感想

奇妙で、非常に手の込んだゲーム。カードゲームと並行して小屋の中で何かを行うことがとりあえずの目的であるのだが、カードが語りかけてきたりカードにされたりするように本作には一筋縄ではいかない秘密、仕掛けがあるのはトレイラーからもおわかりいただけると思う。
カードゲーム以外にもやることが多少はあるものの、基本的にはカードゲームで勝ち進んでいくことがメイン。ゲームシステムはカードを配置できる場所が決まっており、対面の相手と戦って勝敗を決めるタイプとなっている。カード情報はそれを場に出すためのコストのほか、攻撃力と体力、特殊能力というわかりやすい構成。カードの攻撃位置が空いていれば、その攻撃はカードではなく相手へのダメージになる。ダメージは天秤で示され、与えたダメージは相手側の秤に乗せられていく。その均衡が崩れある一定値まで天秤が傾くと決着、となる。

カードゲーム画面。攻撃を防ぎつつ、自分の攻撃を当てて左の天秤を限界まで傾けよう（暗いけど）。
画面の視点は上下で何段階か変更できる。

特殊能力もわかりやすいものが多く、こちらだけカードの状況に関係なくアイテムも使用できるため、カードゲームとしてかなりとっつきやすい部類。ただ簡単というわけでなく、各ステージでのボスはそのキャラクターにちなんだセットプレイだけでなく、こちらが使えないような特殊効果、特殊ルールを使ってくるなどいい意味で個性的。ボスの登場ポイントや戦術は固定なので、対策を考えながらゲームを進めていく形になる。

そして本作最大の特色は、カードゲームだけではなく謎解き要素、脱出ゲーム的要素がある点。プレイヤーは「彼」と延々ゲームをやる羽目に遭うが、行き先を選ぶマップフェーズではいつでも席を立つことができ、小屋の中を散策することができる。小屋の中にはアクセスできるいろいろなものがあり、中には明らかなパズルのようなものも。それらのヒントは、カードゲーム中に喋るカードが教えてくれたり、パズルを解いて出てきたものをカードゲーム中に使用したり……と、範囲は双方にまたがっている。つまり図式的には脱出ゲーム（？）の中でカードゲームをやっていることになるのだが……という部分から、ゲームを進めていくとさらに予想外の展開へと進んでいく。
この辺はぜひプレイして確かめていただきたいのだが、この手の重層的な内容のゲームで得られる独特の感覚を味わうことができるし、そこに惹かれない人でもアイテムとして使用できる「ペンチ」や「短剣」など、カードゲームにも関わらず痛々しい描写や演出の作り込みに圧倒されると思う。