映画感想「スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」

2021年、アメリカ制作のスーパーヒーロー映画。バットマンやスーパーマンなどのヒーローを擁するDCコミックスに登場するヴィラン(悪役)たちが集合する作品。マーゴット・ロビーやイドリス・エルバなどが出演。またシルヴェスター・スタローンも声優として出演している。監督はMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品の「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」シリーズを手掛けたジェームズ・ガン。ちなみに年齢制限あり(R15+指定)の作品。

アメリカ合衆国政府の極秘命令により、収監された悪党たちを集結させた「決死部隊」(スーサイド・スクワッド)ことタスクフォースXは、南米にある独裁国家コルト・マルテーゼへの潜入を言い渡される。反米主義者のルナ将軍による軍事クーデターが起こっており、その国で行われていた地球外生物の科学実験「スターフィッシュ計画」がアメリカと世界の脅威になるため、研究施設を完全破壊し計画を消滅せよとのこと。入隊者は作戦を成功させれば10年の恩赦、命令に背いた場合後頭部に埋め込まれた爆弾で頭が吹き飛ぶという、悪党に負けず劣らず非人道的な処置を施される。最凶の狙撃手「ブラッドスポート」として知られるロバート・デュボアも、その腕を見込まれ入隊を迫られていたがそれを拒み粛々と刑に服していた。ところが彼の娘が万引きで捕まったことからそれを脅迫材料にされてしまい、デュボアは部隊への参加を余儀なくされるのだった。

「スーサイド・スクワッド」という作品は実は2016年にも制作されているのだが、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインが人気を博したものの作品としての評価はかなり散々。そんなこんなで、本作「"極"悪党、集結」は監督にジェームズ・ガンを据え、前の作品と繋がりのない(一部設定と役者は同じ)仕切り直しの作品となっている。
そのジェームズ・ガンも、MCU「ガーディアンズ~」をヒットさせ売れっ子の仲間入りを果たしたところを過去のTwitter発言が元でディズニーから解雇、干された結果DCに拾ってもらったという経緯がある。発言の内容やキャンセルカルチャー云々の話は置いておいて、要するに作品にも監督にもミソがついた状態だったのだが、出来上がった本作はそれらを払拭するほどの快作。ジェームズ・ガンの作家性ともマッチしており、彼に目をつけたDCはグッジョブといわざるを得ない。

はみ出し者集団を動かすのが大得意なジェームズ・ガン。
こんな見た目の連中でも映画が終わる頃には好きにさせてくるから侮れない。

本作はとにかく冒頭からふざけきっており、ドギツイ描写をこれでもかというほど笑いとして見せてくれる。この不謹慎さは監督の十八番といったところ。映画全体の縮図ともなっているので、ここでゲラゲラ笑えた人はその後も安心して観ていられるといっていいだろう。
本作でもっとも優れているところは、とにかくキャラクター造形に尽きる。スーサイドスクワッドのメンバーの大半は、印象としては基本「悪党」というより「変わり者」もしくは「イカれた奴」であり、ジェームズ・ガン節ともいうべきくだらない軽口やしょうもないコント的会話のおかげでとにかくお茶目かつ魅力的。
ちなみに自分は原作知識は皆無だが、元作品の知識がないと不都合な部分などはほとんどなかったと思う。知っていればプラスに働く部分はあるのかもしれないが、作品自体の作りがご新規さん向けになっているし、原作から膨らませたであろう監督のキャラクターづけは、肝心のところで「らしい」動きをちゃんとしているものと思われる。
個人的に一押しキャラクターは「ピースメイカー」という男で、平和維持のためならどんな犠牲も(=誰を何人殺そうとも)いとわないというやべーやつ。目出し兜に筋骨隆々で、キャプテン某的なヒーローらしい容姿なのもポイントが高い。WWEプロレスラーのジョン・シナが演じており、このキャラクターのみのスピンオフドラマも公開予定だとか。また、2016年版での当たりキャラのハーレイ・クインも再登場し、マーゴット・ロビーが続投で演じている。人気者らしく危なげのないスタンドプレイを見せてくれるのだが、ヤバさに関しては他のキャラも負けていないので見た目ほど狂った感じのない陽気なお姉さんといった印象。

単独スピンオフも作られた人気キャラ、ハーレイ・クイン。
白塗りなので鼻血姿や流血が強調されるのだが、痛々しさがないのはある意味すごい。

また、「悪党」であるスクワッド・メンバー以外のキャラクターも、まともなやつがほとんどいないというのも巧いと感じた。デュボアを脅し、逃亡したスクワッド・メンバーを容赦なく爆発させる長官ウォラーをはじめ、クーデターを起こしたコルト・マルテーゼの政府軍、スターフィッシュ計画に没頭する研究者など、ワル度は悪党に負けていない。そのためごく一部の普通の人の「まともさ」が際立つし、イカれたスクワッド・メンバーであっても土壇場で人間味のある選択や意志を貫き通す姿を見せるので、ろくでもない連中が多い中で相対的にしっかりヒーローとして描かれている。
また、少しネタバレになるかもだが、物語の終盤では巨大な敵が登場し、怪獣映画や特撮好き垂涎の展開になっていく。注目すべきは巨大な敵が街をこれでもかというほど破壊していくさまで、移動する主人公たち、倒壊する建物、巨大な敵とワンカットで大きさの対比をしっかり描いており、この見せ方は巧いと思った。ある幻覚持ちのキャラクターの目を通して見たときの絵面なども笑えるし、ふざけているようで実際怖い攻撃方法や、圧倒的過ぎる戦力差からの倒し方も納得。

というわけで、ジェームズ・ガンの力量を見せつけた痛快作。不謹慎で会話がくだらなくて笑えて、キメるところではしっかりキメる、全体的にMCUの「ガーディアンズ~」らしいテイストなのだが、それはもはや監督の作風。ちなみにジェームズ・ガンは後にディズニーに復帰し、MCUの「ガーディアンズ~」3作目でもメガホンを執るとのこと。バイオレンスやブラック・コメディは大丈夫だけどアメコミはわからん、という人にもおすすめしたい作品。

画像:© 2021 WarnerBros. Entertainment inc.