映画感想「タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら」

2010年のホラー・スプラッター・コメディ。監督はイーライ・クレイグ。タッカーをアラン・デュイック、デイルをタイラー・ラビンが演じる。原題は「Tucker & Dale vs Evil」。Amazon Prime Videoにて視聴。

ストーリー

数人の大学生たちが、人里離れた森の奥へキャンプにやってきた。その森はかつて凄惨な殺人事件が起こったという場所。彼らはその道中、不気味な二人の男を見かける。気にせず大学生たちはキャンプ地で楽しむのだが、その中の一人アリソンは、リーダー格の男チャドのアプローチを回避して湖でひとり泳ごうとしたところ、あの不気味な二人組が見ている事に気づき動揺して岩に頭を打って溺れてしまう。男たちは水に落ちた彼女を引き上げるのだが、それを他の大学生たちに目撃される。
実は不気味な男たちは、昔からの幼馴染のタッカーとデール。陽気なタッカーと小心者のデールは、二人で買った森の別荘で休暇を過ごすためにやってきただけなのだ。デールがアリソンを助けて治療するうちに彼女と打ち解ける一方、大学生たちは彼女が殺人鬼に拉致されたと勘違いし、好戦的なチャドは手斧をちらつかせ「俺たちで解決しよう」と笑うのだった……というのが序盤。

大学生たちから見たタッカーとデール。
土地勘のない場所で他人からこんな顔で見られたら不気味に思うのも無理はないかも。

感想

90分弱という短い時間ながらとても濃い内容のホラー・コメディ。冒頭5分でタッカー&デールの素性と大学生たちの彼らに対する思い込み、勘違いが示され、観る側が「どう話を面白がればいいのか」を提示してくれる。本作の主人公はデールで、強面だが臆病で自分に自信のないふとっちょ青年。便所掃除の仕事をしている。タッカーのほうはデールとは反対に明るく度胸がある人物だが、デールの人柄や能力を認め、いつも彼を励ます兄貴肌の憎めない男である。最初に大学生たち視点で見た第一印象とはまったく真逆というギャップがすでに面白く、そして大学生側からはそれがまったく解けないまま話が進んでいくのだ。
こうした勘違いは大学生以外に対しても起こる。二人は別荘に向かう途中で警察官に呼び止められるのだが、飲酒運転していたことを隠そうと色々やった結果、警察官には殺人鬼とはまた別の勘違い(言及はしないが)をされる。二人は他人から何かしら「勘違い」をされやすいということを刷り込む、巧いやり方だと思った。

警官が運転席に行くと、(飲酒を隠すため)多少慌てながら受け答えする二人。
デールの髭面と体型がなかなかゲイ術点高いのもポイント。

こうした誤解や勘違いがどんどんエスカレートしていくのが本作の醍醐味である。誤解を解こうとする当人たちの想いとは裏腹に、彼らの身の回りで勘違いを助長させるような「そうはならんやろw」という展開がさらに状況をややこしく、面白くしていくのだ。あまりにコント過ぎてご都合的といえなくもないが、大体が二人の状況をより悪くするもので笑いに繋がっているし、実際に勘違いを俯瞰的に捉えると得てしてそう見えるものかもと思わせてくれる。また、ここでの笑いにスプラッター要素が用いられており、これが後戻りできない状況へと物語を追い込んでいく。ここが本作で観る人を唯一振るいにかける点だと思う。
そうしたメインストーリーとは別に、本作は自分に自信のない男デールが、大学生グループのアリソンを気に入り彼女と交流を深めていくという恋愛的要素と、タッカーとの友情を感じさせるシーンなど、ホラー・コメディの中にもしっかりとサブプロットが織り込まれ、見終わった後の満足度は高い。

手斧や先端を尖らせた木など、タッカーとデールを殺る気まんまんの大学生たち。
そんな物騒なものを持ってると、危ないぞ~……。

まとめ

というわけで、憎めない二人組男性のおバカ勘違いホラー作品。グロ描写が大丈夫なら、難しいことを考えずに短い時間で笑えてほっこりできる良作だと思う。

画像:© 2010 T&D Productions Limited

Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/dp/B079M6XKXB/