映画感想「ミニオンズ・フィーバー」

2022年公開の3DCGアニメーション映画。イルミネーションズ制作、ユニバーサル配給。黄色い体にゴーグルがトレードマークの「ミニオン」たちが活躍する、「怪盗グルー」シリーズの前日譚スピンオフ「ミニオンズ」の続編。一応シリーズ作品はすべて一度は観ているので、今作もAmazon Prime Videoにて視聴。

ストーリー

1970年代。悪党集団「ヴィシャス6」の創設者にしてリーダーであるワイルドナックルズは、仲間が手に入れた地図を頼りにアジアへと渡り、遺跡の奥で神秘の石「ゾディアックストーン」を発見する。ゾディアックストーンは春節の始めとともに強大な力を放つ魔法の石。お宝を手に入れたワイルドナックルズは仲間たちの空挺で脱出しようとするが、仲間たちの裏切りに遭いストーンを奪われたあげく空から突き落とされてしまうのだった。
一方、スーパー悪党を志す少年グルーはミニオンズを従え、少年なりに悪の限りを尽くしていた。そのグルーのもとにヴィシャス6から面接の知らせが届く。ナックルズの欠員により、新たな悪党を募集することにしたのだ。グルーにとってワイルドナックルズは憧れの悪党。その彼が率いていたヴィシャス6に入れるかもしれないと俄然張り切るグルーだが、いざ面接に行くと彼らは子供だとは知らなかったようで「ガキはお呼びでない」と一蹴される。気落ちするグルーだが、ヴィシャス6に実力を見せつけようと彼らが飾っていたゾディアックストーンを奪って逃走、追跡するヴィシャス6を見事振り切る。一方、ヴィシャス6から追放され生き延びたワイルドナックルズも、ゾディアックストーンを奪ったグルーの動向を追っていた……というのが序盤。

感想

相変わらず面白かった。前作「ミニオンズ」はグルーと出会う前のミニオンたちを描いていたが、今作は少年のグルーと出会った後の物語となっている。それまでに作られた作品と繋がりはあるが、基本的に独立している。ミニオンたちは有史以前から存在し、その時代の最強最「悪」の主に仕えてきたという不思議な種族。「ミニオンズ」でグルーと出会い、今は彼に仕えているという部分さえ押さえておけばOK。

悪党に憧れる少年グルーと、彼に仕えるミニオンズ。
本編での関係はグルーが少年時代から続いていたようである。

ファミリー向け映画であるため、「悪党」や「悪事」はドン引きしない程度の描き方にとどまっている。まあ「悪党」という存在が普通に認知されていたり、ミニオンという種族がいたりというマンガ的なリアリティラインの上で成り立っている世界なのだけど、悪いことの描写もギャグを交えたマンガ的なものになっており、適度にワルいやつでありながらも嫌いにならないという絶妙なバランス感。
そのバランス感覚の良さはストーリーからもうかがえる。悪党に憧れる少年グルーの物語に中心を置いているのだが、メインどころの登場人物のほとんどにちゃんと見せ場や活躍する場面があり、87分と短いながらも相対的に内容は濃く感じた。グルーだけでなく、途中から別行動することになるミニオンたちとの2パートになっているが、「おっ」と思ったのはそれぞれのパートがある時点から同時に俄然面白くなっていくこと。そこにたどり着くまでもミニオンズらしいはちゃめちゃな感じで普通に楽しいのだが、前述の部分からさらにワクワク感にギアがかかる感じがよかった。ミニオンたちのパートは面白さで強引に引っ張っていき、グルーパートのそれはきちんと前段階で理由付けがしっかりなされている。特に後者は、グルーの家族関係を考えるととてもほっこりする。そんな中で、本作はいつものケビン、スチュアート、ボブの三人組の他に、もう一体メインとなるミニオン・オットーが登場する。ちょっと太めでおしゃべりで歯列矯正をしているのが特徴で、このミニオンが起こしたことが原因でゾディアックストーンを奪ったグルーはピンチに見舞われることになる。こいつはこいつ単独で動くのだけど、そこにもちゃんと見所があってよかった。

オットー。3人組とは別行動するミニオンで新キャラ(たぶん)。
最初は煩わしい見えるキャラだが、これの印象が徐々によくなってくるのもうまい。

ヴィシャス6は全員見た目が個性的ながら、追放されたワイルドナックルズ以外はとくにキャラクター的な掘り下げはあまりされていない。その中では、修道女ながらヌンチャクを使いこなすヌン・チャックが一番演出が目立っていてよかった。他にはジャン・クロード・ヴァン・ダムとドルフ・ラングレンというユニソルコンビが声を当てているが、キャラ的にはほとんど目立たず。ほとんど全員が個性的過ぎるのでこのあたりは致し方ないかも。

悪党集団「ヴィシャス6」。個性的な6人の悪党たち……なのだが、
リーダーのワイルドナックルズ(中央)はこの後すぐに追放されてしまう。

パートを分ければ分けるほど複雑になりがちだが、そのへんもスッキリ整理されているし、何よりどのパートも深く考えなくてもわかるギャグのつるべ打ちで笑わせてくれるので、退屈な場面が少なくワンシーンワンシーンが面白かった。

まとめ

というわけで、毎度安定感のある3DCGアニメーション映画。相変わらずミニオンたちはかわいいし、奇妙な彼らのどたばた劇だけでなくちゃんと話にドラマがあり、映画を見たという満足感を与えてくれる。何より他のシリーズ作品が観たくなるので、スピンオフとしては十分成功していると思った。

画像:© 2022 Universal Studios.

Amazon Prime Video(字幕版)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8PCWSBF/