映画感想「We Go On -死霊の証明-」

2015年の心霊ホラー映画。監督はジェシー・ホーランドとアンディ・ミットン。主演はクラーク・フリーマン。かなり低予算であることをうかがわせる作りと、90分弱という時間、そしてあらすじの内容に惹かれ、Amazon Prime Videoにて視聴。

あらすじ

ビデオ編集者として働くマイルズ・グリッソムは、死に対する異常な恐怖から運転恐怖症、腐敗恐怖症など、死を連想させる様々な恐怖症や悪夢に苛まれながら日々を生きていた。あるとき限界に達した彼は、新聞とネットに「死後の世界を証明した人に30000ドルを進呈する。死霊とかを見せて欲しい」という広告を掲載する。死は終わりではなく、その先の世界があることを自分の体験として知ることで、死に対する恐怖から逃れたいと考えたのだ。
マイルズ本人も予想していた通り、届いた1000通を超えるメールやビデオレターの大半はお金欲しさの嘘でたらめやなにかの勧誘、ドラッグ広告など愚にもつかないものだった。彼はその中から信憑性のありそうな「学者」「霊媒師」「起業家」の3人をピックアップする。広告を見て息子を心配しかけつけた母親シャーロットとともに、マイルズは彼らの元を訪れるのだが……というのが序盤の流れ。

死への恐怖で滅入ってしまったマイルズについていく母シャーロット。
いい年して親に付き添われるマイルズの頼りなさと、母親の頼もしさが妙にリアル。

感想

個人的には導入でなかなか引き込まれた。主人公マイルズ自身は心霊的なものに対してフラット(どちらかというと懐疑的)でありながら、追い詰められたその状況は自らそういうものに近づこうとする動機として納得できるし、更に本人は「死後の世界があって欲しい」というのも変化球的で面白い。この「疑っているけど信じたいし救われたい」主人公に対するブレーキ役として、同行する母親シャーロットの存在もうまく機能しており、設定や役回りが「新鮮なのにリアリティがある」ものになっていると感じた。
またホラーとしても特殊で、怖い映像や怖いシチュエーションのような観客を「怖がらせる」ことに重きは置いておらず、おっかなびっくりなシーンやショッキング、グロテスクなものは少なめ。主人公が抱える恐怖症の治療として「死霊」がいるかどうかという話になっているので純粋なホラーとはだいぶかけ離れているが、死霊というものの存在が色濃くなればなるほど主人公の治療にとってプラスとなるというギミックがなかなか新鮮だった。「シックス・センス」を引き合いに出す広告宣伝は煽り過ぎだが、中盤からクライマックスの展開も予想外で、ちょっとした驚きと妙な納得感がある。

なぜか顔が血みどろのマイルズ。
死霊を見せて欲しい、と願った彼の行く末は?

まとめ

というわけで、怖さよりも興味深さと納得感で満足できる風変わりな心霊ホラー。突拍子もないアプローチながら恐怖症や心理的トラウマを克服していく過程を見ているような、不思議な気分になった。作品としては非常にこじんまりとしており、ど直球に映像やクリーチャーなどで怖がりたい人の期待に応えるものではないものの、脚本やシーンに無駄がないためよくできた掘り出し物感がある(最後の最後は蛇足感があるけど)。
母親の愛のようなものもサブテーマとして盛り込まれ、「子供を救うためなら母親はなんだってやる」というセリフが後々効いてくるのもよかった。

画像:© 2015 Untethered Films, LLC.

Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/dp/B071YMQ534/