映画感想「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」

2022年の恐竜SF映画。主演はマーベル映画「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』でも主役を演じるクリス・プラット。またサム・ニールやローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムなど、「ジュラシック・パーク」の主要人物も登場する。監督はコリン・トレボロウ。エクステンデッド版をレンタル視聴。

あらすじ

DNAを補完修復され現代に蘇った恐竜たちは、前作「ジュラシック・ワールド/炎の王国」にて世界に放出された。国連から恐竜保護を委託された企業「バイオシン社」が保護活動を続ける一方、密猟者たちによる恐竜狩りや違法売買も問題になっている。元ジュラシック・ワールドの恐竜飼育員オーウェンはシエラネバダの麓でパラサウロロフスを保護したが、そこを密猟者たちに囲まれ恐竜を奪われてしまう。密猟者らの脅しに屈してでも、オーウェンには生きる理由があった。山奥で生活する彼のロッジには恋人のクレアと、前作「炎の王国」でクローン技術により生み出された少女メイジーがいたのだ。クローン少女として知れ渡ってしまった彼女をオーウェンとクレアは匿っているのだが、オーウェンをつけていた密猟者にその存在が見つかってしまう。
一方、世界では巨大なイナゴの大群が穀倉地帯を食い荒らすという蝗害が発生していた。古植物学者に復帰したエリー・サトラーは、イナゴがバイオシン社の種だけ食べないことに目をつけ、かつてともに「ジュラシック・パーク」を訪れた古生物学者アラン・グラントの元を訪れる……というのが導入。

感想

「ジュラシック・ワールド」3作目にして、「ジュラシック」シリーズ6作目。「ワールド」シリーズでの主役であるオーウェンやクレアだけでなく、グラントやサトラー、マルコム、さらにシリーズを通して暗躍してきたヘンリー・ウー博士、役者は違うが「ジュラシック・パーク」以来の登場となるルイス・ドジスンまで登場するなど、「パーク」3部作を含めた総決算的な作品となっている。個人的にはイアン・マルコム博士の胡散臭さが大好きだったので、彼が変わらず革ジャン姿に芳忠ボイス(吹替版)で飄々としているのを見て懐かしくなった。

「ジュラシック・パーク」以来の集結となるグラント、サトラー、マルコムの3人。
「また同窓会展開か」……と頭ではわかっていても、やっぱり嬉しい。

本作はまず映画が始まるとプロローグとして6500万年前の地球の姿が描かれ、セリフも説明もなくひたすら恐竜たちの生態系が生き生きと表現される。ここでの恐竜たちはまるで見てきたんじゃないかと思うほど動きが素晴らしく、これだけで「ああ、『ジュラシック・パーク』(シリーズ)だ」と感じさせてくれる。それまでも、特に初代を映画公開時に観に行ったときには衝撃を受けたものだが、本作でもまたそれを味わうことができるのは普通に感動した。
本作では恐竜が世界に解き放たれたその後が描かれる。T-レックスがドライブインシアターに乱入したり、モササウルスが漁船をひっくり返したりなどなかなか深刻な被害をもたらしているのだが、意外にも人間社会の秩序は保たれており、文明崩壊レベルの世界を期待すると結構肩透かしを食う。それでもクレアは不法侵入など強行的な方法で恐竜の密猟や違法飼育と戦っていたり、化石発掘をしているグラントは子供から「恐竜なんてそこら中にいるのになに無駄なことしてんの?w」みたいな感じでバカにされていたりと、それなりに変化は描かれる。
個人的に注目したのは遺伝子操作されたアトロキラプトルという肉食恐竜で、レーザーポインタで照射された人間を標的と認識し襲いかかるというもの。このネタ自体は「炎の王国」からあったが、架空恐竜を作り出してしまうよりかはまだ「恐竜映画」として許容できるラインだと思うし、恐竜放出以後の世界で起こりそうなこととして納得できる。こいつが大暴れするのがマルタ島でのシーンなのだが、恐竜たちが取引されている闇市の描写は闘鶏ならぬ「闘竜」が行われていたり、おそらく恐竜の肉が調理されていたりとまるで異世界で、いい意味でやり過ぎ感があって面白かった。

アトロキラプトル。白亜紀後期の肉食獣脚類で、お馴染みのウェロキラプトルよりゴツい。
Wikipediaによると、初代「パーク」公開より後の1995年に初めて化石が発見されたという新参者。

本作にはT-レックスなどお馴染みの恐竜のほか、先述のアトロキラプトル、ギガノトサウルス、テリジノサウルスなどそれまでシリーズには出てこなかった恐竜なども登場し、「恐竜見世物映画」的な部分は一応押さえている。なにより「恐竜にひどいことをした人間が、恐竜にお仕置きされて殺される」という、このシリーズで最も痛快で教訓的な部分もちゃんと用意されているのだ。ここはしっかり褒めてあげたいところ。
賛否ありそうな巨大イナゴについてだが、ところどころ出てくるものの恐竜に比べると主張は弱めというか意図的に抑えられており、人類に害をもたらす描写は間接的なものが多いと感じた。まあ大きさが大人の指先から肘くらいなので正直恐竜よりも衝撃的(気持ち悪さ的な意味で)なので仕方ないが、初登場時の子どもたちが隠れた納屋を覆い尽くすシーンは「ミスト」のスーパーマーケットでの一幕みたいで個人的にはニッコリ。ただ、このイナゴの存在は明らかに「恐竜が世界に広がった今作のカオスめいた世界をどうするのか」という点から話をすり替えてしまっている。まあそこを追求しだすと「炎の王国」で恐竜大放出を行った人物に何かしら報いがないと消化不良になってしまうから、と判断したのは想像に難くない。ただやはり初代「パーク」が遺伝子操作による恐竜の復元に対し劇中で痛烈に批判、議論するシーンを含めていたことを考えると、本作はそれでいいのかという感は否めない。

まとめ

というわけで、新旧キャスト勢ぞろいで、シリーズ総決算的なお祭り恐竜映画。恐竜の動きやCGなどはまさに現代に作られた意義がある出来栄え。エクステンデッド版を観たので2時間41分という長尺ながら、特にダレることなく見られた。物語的に少々気になるところはあるが、やっぱり恐竜が動くシーンは迫力があって楽しいのだ。

画像:© 2022 Universal Studios, Amblin Entertainment Inc. Perfect Universe Investment Inc.