映画感想「ザ・ライト -エクソシストの真実-」

2011年のサスペンス・ホラー映画。主人公の青年マイケルを演じるのはコリン・オドナヒュー、エクソシストのルーカス神父を演じるのはアンソニー・ホプキンス。公開時に劇場で見たのだけど、久々に観たくなったのでAmazon Primeにて視聴。

ストーリー

マイケル・コヴァックは家のしきたりで葬儀屋か神父のどちらかを選ばなくてはならなかった。葬儀屋の息子でありながらも神の存在を信じない彼は、家の手伝いからも離れるために神学校へ入学する。信仰を否定的に見るにも関わらず彼は優秀であり、目をかけてくれた恩師の勧めで半ば強制的にローマの悪魔祓いの講習を受ける羽目に。そこでコヴァックは伝説のエクソシスト、ルーカス神父を紹介される。彼の悪魔祓いの一部始終を目撃したコヴァックはそれで考えが変わるわけではなかったが、奇妙な事が起こった。神父が悪魔祓いを行った女性が身につけていた首飾りがなぜかホテルに戻った彼のポケットに入っており、しかもそれは実家で父の手伝いをしていた際に自殺した女性がつけていたものと同じものだった……というのが序盤。

ジムで運動をしながら友人と進路の話を話すコヴァック。
真面目だが神の存在は信じない、という繊細な設定をよく表している。

感想

全体のお話としては、信仰心を持たない主人公コヴァックが悪魔祓いを通して信仰に目覚めていくという話になっている。途中で明かされるが、彼が信仰を持たず神の存在や奇跡を信じないのにはある理由というかきっかけがあり、作品の核心もそこへ迫っていく。コヴァックは神学校や悪魔祓い講習でも疑問や否定的な見解を講師たちにぶつけるのだけど、改めて書くことでもないが彼のこの立ち位置はなかなか効果的に思う。主人公同様、こうしたことに懐疑的な人間の多くは「神を信じなさい」と他人に言われて手放しにその通りにすることはしない。無論、創作では「そういう設定」と分けて考えるが、本作は「そういう設定」と見なされないために一気に奇跡や悪霊の世界に引きずり込むことはせず、コヴァックという観る側の代表を通してゆっくりとそうした超常的な事象へ誘おうとする、なかなか丁寧な作りになっている。

コヴァックを出迎える伝説のエクソシスト、ルーカス神父。
庭にある古いバイクなどから性格がうかがえる、生涯現役の活発なおじいちゃんだ。

また超常的と書いたが、本作は何も悪霊が飛び交ったり十字架が光り輝くような派手な内容ではない。そうした明らかに現実離れしたものではなく、通常ありえないが決して起こらないわけではないというギリギリ現実的な事象に留めている。たとえばストーリー紹介で触れた「悪魔憑きの女性がつけていた首飾り」と、「コヴァックが故郷で父の手伝いをしていた際に見た遺体がつけていた首飾り」が偶然同じものというのもありえないことではない。さらにそれが悪魔祓いの場に同席していたコヴァックのポケットに入るということも、手段はともかく同席していたのであれば「絶対に」ありえないということはない。……のだが、そんなことは現実的には起こり得ないし、それ以外も明らかに「おかしい」事象で悪魔の存在を垣間見せる。徹底して説明つかなくはない描写が続くのだが、これが話にリアリティを生み出している。
そんな中での見所が終盤の悪魔祓いのシーン。信仰心を持たない若者と、伝説のエクソシスト――となるとお話のパターンは限られてくるが、エクソシストを演じるのがアンソニー・ホプキンスということで後半の展開はおそらく大体の人が期待するものになっている。あえて明示はしないがその際のホプキンスは流石といった感じだし、そこに至るまでの描写やそれをコヴァックがどう打開するかもベタながら丁寧。私がこの作品が好きなのは、コヴァックが嫌う「信仰」と祓うべき「悪魔」が、多くの人間にとって無関係でない事柄に置き換えられるからだと思う。神を信じる映画に見せかけて、人としての立ち直りを描いてもいるのだ。

この画像でもうどういうことになるかがわかってしまうと思うが、
本作の見所でもあるのでぜひ。

まとめ

というわけで、派手さはないがかなり現実的な悪魔祓いを楽しめる作品。総じて展開に無理がないし、むしろそうしたところは敢えて「悪魔の仕業」と見なすこともできる。コヴァックの物語としてもちゃんと成立しているエクソシストもので、個人的にはおすすめしたい作品。
ただ一点、この手の作品で「これは実際に起こったことです(モデルがいます)!」と強調されると途端に胡散臭さが出てしまうというか、そこに興味がない人間からするとただただ蛇足に感じてしまうのだった。

Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/dp/B013UE9TI6/