ドラマ感想「トゥルース・シーカーズ ~俺たち、パラノーマル解決隊~(Season1)」

2020年10月末から配信がスタートした、アマゾンオリジナルドラマ。イギリス制作。
コメディアン出身の俳優、サイモン・ペッグとニック・フロストの二人が企画・制作・主演を務める。二人は「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ」「宇宙人ポール」などに揃って出演している、いわば盟友。特にサイモン・ペッグは近年の大作映画やドラマにちょこちょこ脇役として出ているので、なんか見たことあるという人はいるかもしれない。

主人公ガス・ロバーツ(ニック・フロスト)はネット回線業者で働くベテランの修理専門スタッフ。そしてもう一つの顔として、仕事の合間に心霊スポットへ赴き怪奇現象を調査する「トゥルース・シーカーズ」という番組を趣味で配信するユーチューバーでもある(しかしそれらしい現象など起こることはなく、チャンネルの伸びもよくない)。本人もオカルトを信じているというより楽しんでいるという冷静な視点の持ち主。
あるとき、上司命令で新しい若者がニックの相棒になる(ちなみにこの上司役がサイモン・ペッグで、超絶似合わないカツラをつけている)。相棒になった青年の名前はエルトン・ジョン。お人好しで怖がりだが、かなり色々なアルバイトや仕事を経験しているという変わった経歴の持ち主。彼が加わった初仕事で、ガスは初めて現実的に説明のつかない現象に遭遇する。これ以降、ガスの行く先々でそうした現象が起こり、さらに霊に追われる謎の少女アストリッドが加わった三人組で行動していくことになる。

左から、ガス、アストリッド、エルトン。なんともパッとしないが、みんな嫌味がなく癖になる。

ドラマ自体はゆるい超常現象サスペンスコメディ、といった感じ。ガスたちが回線の悪いところへ派遣されて行くと、その原因にオカルティックなものが関係しているというのがお決まりの流れ。
パラノーマル系ドラマにある雰囲気やセオリーを、コメディを多めに組み立てていくというペッグ&フロストお得意の味付けになっている。パロディ感も必要以上にわざとらしくなく自然。すっとぼけたようなギャグも、二人ならではといった感じ。
最近のHBO制作など金のかかったドラマに比べると派手さはないが、毎回30分と短い上に細かいギャグが詰められテンポがよいのでスルスルと見られる。しかも1話1話、別個の話のように見えてすべてつながっており、終盤では大きな陰謀が明らかになるという仕掛けになっているのだ。

また、超常現象を追っていくだけでなく、登場人物の問題や心理へのスポットの当て方もうまい。
特にエルトンの姉ヘレンは、最初の登場からは考えられないくらいどんどん印象がよくなっていく。ガスと同居している義父はマルコム・マクダウェルが演じている。あの「時計じかけのオレンジ」のアレックスである。もうすっかりおじいさんだが目つきなんかはそのままで、キャラクターとしてもそのマインドを少し受け継いだちょい悪オヤジ。これもまたいいキャラである。

シリアスなシーンでもどこかふざけた空気が漂っており、大仰さはないがキャラクターに嫌なところがなく退屈せずに見られる。何より短いのでドラマながらおすすめしやすい。ギャグで笑わせながら、その発言にちゃんとした理由があることが後々になってわかってきたり、さりげない小ネタが実は暗示であったり説明になっていたりと脚本も徹底している良作。

画像:© 2020 Stolen Picture, Sony Pictures Television

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