ゲーム感想「Carrion」

2020年7月配信の2Dアクションゲーム。Phobia Game Studio開発、Devolver Digital販売。
プレイヤーは謎の触手モンスターとして、研究施設内にいる人間を喰らいまくっていく。早い話がモンスターパニック映画のモンスター側になって大暴れできる、逆ホラーものである。血みどろグッチャグッチャだがCEROはD。

何よりもまず、このモンスターの造形と動きがいい。見た目は不定形の肉塊で、触手を自由に伸ばしてものや獲物を掴むことができる。獲物は肉塊の本体に近づけるとバリバリと食いはじめる。人間を食べるとモンスターはどんどん成長し、体が大きくなっていく。大きくなると最大体力上昇、さらに不定形さも増し、自分の体の中心がどこかわからなくなる。操作もしづらいが不定形生物を操作している感じがあり、妙な納得感がある。
また、2Dサイドビューのアクションにしては珍しく、ジャンプがないかわりに移動キーを上に傾けると自動で天井に対して触手(足?)を伸ばし、引っ張り上げるように移動できる。この挙動がドットながら重さの表現など非常にリアリティがあり、操作感もいわゆる人など普通の2Dキャラクターと決定的に異なる。四方に触手を伸ばして移動する際の、鞭がしなるようなシュルシュルシュルという音がいかにもそれらしい。なんというか、わかってるという感じ。ただ移動するだけでその周囲がベタベタになるなど、細かい表現もうまい。
マップも、部屋だけでなくダクトや配管など隠れるポイントなどがあり、ロケーションも同じにならないように工夫されている。

天井にぶらさがって触手を伸ばしたり、ドサッと覆いかぶさるなど、映画っぽいアクションは一通りできる。

「Carrion」は、不定形モンスターが手に入れた特殊能力を駆使してそれまで進めなかったエリアへ侵入していくというメトロイドヴァニア的な要素が少々ある。ただし地図はないので、マップを埋めていく、という点での面白さはない。モンスターの特殊能力はどれもユニークで、パニックモンスター系映画にありそうなもので占められている。
また、モンスターは体の大きさによって使用できる一部特殊能力が異なる。小さいときはステルス的な能力、大きいときは正面切って戦う凶暴な能力になっている。体の大きさによって性能が異なり、サイズが大きいと最大体力も大きいが的としても大きくなる。なお体力が減っていくと、それに応じた体のサイズになる。千切れた体の一部が逃げていくような表現になっているのも心憎い。
そして、モンスターは特殊な場所で体を切り離すことができる。切り離した体はそこに停滞し続けるので、任意のタイミングで回収可能。道を阻む障害物や、敵をどう攻略していくにあわせて、能力(=体の大きさ)を使い分けていく面白さがある。

よくできていると感じたのは、ゲームとしてこのモンスターが特殊能力を獲得し成長していく過程が、モンスターパニック映画の流れ通りに進行していくのが面白い。最初は小さく体力も低いため、銃を持った人間一人を襲うにも色々隙をうかがったりする必要があるのだが、体が大きくなり、より攻撃的なスキルを憶えていると堂々飛び込んで大立ち回りみたいなこともできるようになる。また、後半になるにつれて人間側の武装も強化されていき、戦闘も大規模になっていく。
また、それら能力の獲得が、ちょうど直前の能力を使うことに慣れてきただろうタイミングに振り分けられているのもよく練られていると思う。ストーリー的にも、あるタイミングで操作対象がチェンジするシーンが、後で活きてきたときには思わず感心してしまった。

「Carrion」は障害を切り抜けていくパズル的な要素が強く、全体としてのプレイ時間は短め。しかし設定やグラフィック表現などモンスター愛にあふれ、やりたいことを一点に絞って作られた良作でした。

画像:https://www.igdb.com/games/carrion/presskit

公式サイト
https://www.devolverdigital.com/games/carrion

PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/953490/CARRION/?l=japanese

Nintendo Switch
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000020949

Xbox One
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/carrion/9npkknbj258v?activetab=pivot:overviewtab