映画感想「トップガン」
1986年の航空アクション・青春映画。トム・クルーズ主演。監督はトニー・スコット、巨匠リドリー・スコットの弟である。本作は戦闘機映画の代名詞であり、トムをスターに押し上げた作品。観ようと思いつつ観ていなかったが、30年以上ぶりの続編「トップガン マーヴェリック」が最近公開されたこともあってAmazon Prime Videoにて視聴。
無鉄砲で知られる海軍飛行士のピート="マーヴェリック"とレーダー役の"グース"(""はコールサイン)は、同僚でその艦一番のパイロットである"クーガー"とともに、インド洋沖で国籍不明のミグ戦闘機と接触する。クーガー機の後ろを追いかけプレッシャーを与えるミグの上から、マーヴェリックは上下反転状態のまま接触スレスレまで接近、危険を感じた相手機は戦線を離脱する。マーヴェリックの無謀ともいえる操縦によって危機を脱したが、死の恐怖を味わったクーガーはそのまま海軍をやめる。マーヴェリック&グースのコンビは繰り上げでその艦のトップパイロットとなり、カリフォルニアのエリート・パイロットを育成する航空訓練学校「トップガン」への派遣が言い渡され、そこで教育を受けることになる。
学校では成績優秀なコンビ"アイスマン"&"スライダー"のコンビとライバル関係になりながらも、教官で航空物理学者のチャーリーと親密になるなど、訓練に恋に大忙しのマーヴェリック。だが、アイスマンたちと成績を競い合う中、最終訓練である悲劇が起こってしまう……というのが中盤くらいまでの流れ。
おそらく誰でも一度は戦闘機が飛び立つ映像に合わせて流れるケニー・ロギンスの名曲「Danger Zone」を聞いたことがあるだろうと思われるのだが、戦闘機=あのBGMのイメージの元となった作品がこれである。それだけでなく、公開当時は映画を観た若者の間で、トムが乗るカワサキのバイクGPZ900Rや、MA-1フライトジャケットが流行りに流行ったのだとか(実はMA-1の方は映画では使われていない)。とにかく当時の若者に刺さる「カッコイイ」が詰まった作品だったことがうかがえる。トニー・スコットは元々CMディレクターだったそうで、イメージや印象づけに長けていたのかもしれない。
説明不要の名作について今更あれこれ書くのも気が引けるが、見所の一つはやはり戦闘機によるドッグファイトだろう。アメリカ海軍全面協力のもと、実際の戦闘機がふんだんに使われていることもあってそれらが飛び立つときの音や映像は迫力がある。今の観点で観ると、似たようなカットや全体像がつかめない構図が多いと感じなくもないのだが、逆にそれがリアルなのだ。今ならCGを使えばもっとわかりやすく迫力ある画が作れるだろうが、そうした「頭の中で想像した迫力ある映像」とは違う「本物だからこそのわかりにくさ」があり、さらに「その間を想像力で補う」ことの楽しさや価値にも改めて気づかされた。
もう一つ見所といえば、若いトム・クルーズを見られる点である。彼が後に大成することを知っていれば、正面から見たときの感じはとても初々しく新鮮であり、かと思えば、横から見たときの顔つきなどは現在とほとんど変わっておらず、大人びた甘いマスクのトムに見える。見る角度によって純粋に見えたりミステリアスに見えたりといった点が、主人公マーヴェリックの「ちょっと陰のあるやんちゃ野郎」という人物像とハマっているように感じた。この頃から人を惹きつけるスターだったのだというのがわかる。
ストーリーに関していえば航空学校での日常がメインなのだが、ライバル、恋愛、友情と要素は揃っていながら一つを除いてマーヴェリック自身にそれほど影響を及ぼさない。良くいえば淡々としているのだが、逆のいい方をするなら形だけ置いてみました的な印象。その分チャラさや青春もの特有のきつさも抑えめで、そういうのが苦手な方の拒否反応もあまり起こらないのではないかと思う。ポジション的には「嫌なヤツ」であるアイスマンの立ち回りを見ても、意図的にそうしている気がした。
というわけで、若いトムと戦闘機を拝める名作。物語自体が持つメッセージの主張が控えめな分気楽に観ることができるし、それがヒットした理由の一因であるようにも思える。これを青春ど真ん中にリアルタイムで観た人にとって、新作「マーヴェリック」は本当に同窓会に行くような嬉しさがあるのではないかと思う。そういう体験は羨ましい。とにかく目と耳でカッコよさを補充できるので、興味がある方はぜひ。
画像:© 1986 Paramount Pictures.
Amazon Prime Video
https://www.amazon.co.jp/dp/B00G9U1518/
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