映画感想「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」

2021年に公開された(日本では22年初頭)マーベル・コミックのヒーロー映画。2017年から続くトム・ホランド版スパイダーマンの3作目。主演はもちろんトム・ホランド、監督は前々作「ホームカミング」、前作「ファー・フロム・ホーム」に続きジョン・ワッツ。Amazon Prime Videoにて視聴。

あらすじ

今作のあらすじについては、がっつり前作「ファー・フロム~」の結末からの続きとなっているので、一応ぼかしておく。その続きから生じた問題をどうにかするため、ピーター・パーカー(トム・ホランド)はかつてアベンジャーズとしてともに戦ったドクター・ストレンジの屋敷を訪れる。彼の魔術で自身が今陥っている状況を解決してもらおうという腹積もりだったのだ。最初は渋ったストレンジだが、結局ピーターのためにある大掛かりな魔術をかけようとする。しかしその魔術は、ピーターがいろいろと注文をつけたため失敗。その結果、平行宇宙(マルチバース)でスパイダーマンと戦った悪役(要は他のスパイダーマン映画に登場した悪役)たちが彼のもとに集まってしまう……というのが序盤のあらすじ。

魔術を行使するドクター・ストレンジ。
ピーターの願いで全人類に影響を及ぼす魔術をかけようとするのだが、結果はお察し。

感想

「ファー・フロム~」からそのまま続いているような始まり方をするため、問題の発生、そして解決(?)へ動き出すまでの流れが早く、めちゃくちゃテンポがよい。かなり大変な目に遭っているのだが、それほど大人目線での深刻さにはせず、ハイティーンならではの気楽さを残している。
本作はマーベル作品で何度かあった「ヒーロー自身が招いた事態でヒーロー(もしくは世界)がピンチ」パターンとなっている。このタイプの話は結構扱いが難しく、うまくやらないと原因でもあるヒーロー自身が被害者面をしているように見えてしまい、観る側は「元はといえばおめーのせいだろ」という気持ちがずっと残り続ける危険をはらんでいるのだが、本作はあまりそう思わせないようにかなり気を遣っていると思った。
理由は複数あり、まずピーターがまだ少年であり人間として未熟だということ。未熟だから、問題の発端となる(ある意味身勝手な)動機にもある程度納得ができる。次に、その後「ヒーローとはかくあるべき」というヒーロー映画ならではのテーマが示され、ピーターはヒーローらしい理念に従って行動し、判断を誤るということ。これは後々じわじわと効いてくる。そしてこれが一番重要で、ピーターがしっかり己がしたことの報いを受け、彼にとってきつい代償を支払っていること。この手の話は「自業自得」あるいは「因果応報」であることが最も大事で、本作はそこもクリアしていると思う。

それに加えて本作は「他のスパイダーマン映画の悪役が集結」という展開で、そもそも引きはバッチリなのである。自分はそこまで熱量はないものの何作かは見ているので、それらに登場した悪役が登場するとあれば当然懐かしかったし、個人的には特にグリーンゴブリン役のウィレム・デフォーが怪演ぶりを発揮してくれるのでニッコニコで観ていられた。

イカれた悪役がよく似合う、とにかくキレッキレのウィレム・デフォー。
まともなときの精根尽き果てた感とのギャップが素晴らしい。

ただ敵を集めただけにとどまらず、それぞれのスパイダーマン映画のIF、あるいはアナザー作品になっているところも良く、それぞれのシリーズや作品でやり残したこと、果たせなかったことを細やかながら回収、やり直していく展開は、熱烈なファンにとってはたまらないのではと思う。そうでなくても、しっかりとピーター少年が「ヒーロー」という重荷に堪え苦しみながらも背負い続けようとする姿を描いているので、2時間超えであってもちゃんと物語として観ていられる。

まとめ

というわけで、非常に大掛かりな仕掛けが施された「スパイダーマン映画総括映画」ともいうべきお祭り作品。過去に「サム・ライミ監督版スパイダーマン」シリーズ、もしくは「アメイジング・スパイダーマン」シリーズのどれか一つでも観たことがあれば、おそらく楽しめるはず。お祭り感も楽しく、トム・ホランド版ピーターの成長物語としてもよくできていると思った。

画像:© 2021 Columbia Pictures Industries, Inc. Marvel Characters, Inc

Amazon Prime Video
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