映画感想「ランゴ」

2011年公開のCGアニメーション映画。監督は「パイレーツ・オブ・カリビアン」で有名なゴア・ヴァービンスキー。名もなきカメレオンが町のヒーロー「ランゴ」として活躍する、主に西部劇をモチーフにした作品。主人公であるカメレオンの声や動きをジョニー・デップが演じている。音楽はハンス・ジマー。

あらすじ

あるところに、人間に飼育されているカメレオンがいた。彼はヒーローになることを常々空想していたが、飼育槽にいるかぎりそれは叶わぬ夢。だが、ひょんな事故から彼は砂漠のハイウェイに置き去りにされる羽目に。外の世界に解き放たれた彼は、命の危険に遭いながらもどうにかしてダートタウン(土の町)へたどり着く。
西部の町のようなそこは、いろいろな小動物が暮らしていた。住民からよそ者扱いされからかわれたカメレオンは、何者かと尋ねられる。彼はそのときに「自分が思い描いたヒーローになるチャンスだ」と考え、「俺の名はランゴ。西から来た」と名乗り、大ボラハッタリの武勇伝を披露。町の住人は信じきり、さらに住民から恐れられるアカオノスリ(タカ科の鳥類)を偶然退治したことで町長から保安官に任命される。そのときちょうど銀行から水が盗まれ、ランゴは水の捜索をすることになるのだが……というのが大筋の流れ。

自分の武勇伝(作り話)を即興で身振り手振りを交え語る「ランゴ」。
演技達者な話しぶりも相まって、酒場の男たちはすっかり信じきってしまう。

感想

個人的には悪くなかった作品。西部劇をはじめさまざまなオマージュやパロディが入っているのだが、動きが派手でワチャワチャしたアクションなどもあり、CGアニメーションとして単純に面白い。世界観としては、人間が住んでいる世界の片隅に小動物や昆虫、爬虫類たちの世界(ダートタウン)があるといった形で、彼らは人間の捨てたゴミなどをうまく使って独自の文化を築いている。この世界においては水が命の素であると同時に通貨として流通しており、町にある銀行は「水銀行」、取り扱っているのも水。銀行の金庫の中にはウォーターサーバーが置かれているのだが、これらは人間が捨てたものであることがうかがえる。村人たちは誰もが瓶など水を入れる容器を持っているなど、細かい部分はともかく独特の文化がしっかり作られていて生活感がある。
また、ハイウェイで自動車に轢かれそうになったり、自分の身の丈の何倍もある相手に追いかけ回されたりと、まるで自分の体が縮んだときに起こりそうなアクシデントがしっかりと描かれている。特に巨大な鳥などに追い回されるシーンは恐竜から逃げるような見せ方になっており(仮設トイレが出てくることから「ジュラシック・パーク」のパロディと思われる)、こういう特に考えなくても面白い部分が多い。

また、上でも触れたが西部劇やマカロニ・ウエスタンのオマージュやパロディが多いのも特徴。主人公が名乗る名前「ランゴ」は当然「ジャンゴ」に寄せているし、後半で主人公が出会うある「西部の精霊」は、とある俳優を彷彿とさせる(というかほぼそのままな)風貌などかなり入れ込んで作られている。マカロニ以外にも知っていたらニヤリとする他作品のパロディシーンもあり、映像、音楽で全力で遊んでいる感じ。パロディやCGアニメーションによる楽しませだけかと思いきや、みんなを騙してヒーローになったという主人公の負い目やその結果、本当のヒーローになるためには……など、ストーリーもベタながらちゃんとしている。

水を盗んだ泥棒たちを追って、荒野を駆けるランゴと町の仲間たち。
こういう西部劇「らしい」シーンのほか、パロディやギャグが満載。

まとめ

というわけで、西部劇(特にマカロニ)ファンはニヤリとする、全体的にまとまった良アニメーション作品。カメレオンやその他のキャラクターの見た目など、ぱっと見のヴィジュアルで惹きつけるものがあまりないのが欠点といえばそうかもしれないが、個人的には面白かった。

画像:© 2011 Paramount Pictures Corporation