ゲーム感想「Patrick’s Parabox」

2022年3月、PC配信されたパズルゲーム。「Patrick’s」という冠の通り、インディーズ開発者のPatrick Traynor氏が手掛けた作品。見下ろし視点でボックスを規定の位置へ運ぶ、いわゆる「倉庫番」ライクな作品だが、そこに本作特有のギミックを乗っけることで非常に新鮮な遊び心地の作品となっている。

本作の基本的なゲームの目的とルールは往年の名作パズルゲーム「倉庫番」に準拠しており、見下ろし視点でボックスを特定の位置に動かすというもの。では何が新鮮なのかというと、押す対象となるボックスの中に「入る」ことができるという点である。動画を見ていただければ一目瞭然だが、プレイヤーが移動しボックスを押す世界そのものも「箱」であり、ボックスの内部にも「箱」としての世界が広がっているという、入れ子構造的なパズルとなっているのだ。

中に空間のあるボックスは、壁を背にした状態でその対方向から入ることができる。
その中に別のボックスを押し込むこともできる。

そのため基本的に一つの「箱」は画面に収まるようになっており、プレイヤーの出入りだけでなく、ボックス(箱)をその中に持ち込むことも可能。さらに「自室でテレビを見ているそのテレビの中に自室とテレビが映っている」かのような、プレイヤーがいるボックス(箱)の中に、プレイヤーがいるボックス(箱)が存在するといったギミックや、AとBという同じ内部構造で、Aの中に入るとBの中に出るが逆にB→Aは無理といった一方通行のワームホール的なボックス(箱)など、シンプルですっきりしたゲーム画面にも関わらず、空間概念的なエッセンスが詰まっている。

前述のような具体的に言語化できないゲームルールでありながら、プレイヤーができることは「倉庫番」的な操作なため、思考した結果を試すハードルが低い。実際のゲーム画面を見ていると思ったより手軽に正解を導くことができ、最初は「自分って実は賢いのでは」と勘違いさせてくれる。ただしどんどん頭を悩ませる骨太な内容になって来るので、やりごたえも抜群。SFアンビエント系のBGMも心地よく、気がつくと余計なことを考えずパズルを解くことに没頭できる。

というわけで、シンプルなルール&操作に概念的な要素を盛り込んだ野心的パズル。普段ゲームをやらない人にもおすすめできる傑作だと思う。Steamではデモ版も配信されているので、気になった方はぜひ遊んでいただきたい。

ボックスくんの右にある箱と、今ボックスくんがいる箱は同一。
世界を見渡していると思ったら、連続した一部分を見ているという感覚が新鮮。

画像:https://www.igdb.com/games/patricks-parabox/presskit

PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/1260520/Patricks_Parabox/?l=japanese