ゲーム感想「サイバーパンク 2077」

2020年12月10日発売のオープンワールド・ゲーム。「ウィッチャー」シリーズで有名なポーランドのゲーム会社CD Project Red開発。発表から8年の歳月を経てようやく発売された大作である。ジャンルはFPSRPG。
プラットフォームは新たな現行機となったPS5、Xbox Series、PCなど。自分はSteamでPC版を購入したのだが、ゲームフォルダにサウンドトラックなど色々おまけが入っていて得した気分になった。
最初は「サイバーパンク」というジャンル名そのものを冠してくるなんて相当自信があるようだと思ったが、実はそういうわけではなく、これは「サイバーパンク2.0.2.0」というテーブルトークRPGを原作として作られているかららしい。要するに「ウィッチャー」と同じく、設定や世界観がすでに存在するのもののゲーム化というわけである(ちなみに英語とポーランド語だが、この「サイバーパンク2.0.2.0」のPDFもおまけに含まれている)。

自分は「ウィッチャー3」があまり嵌まらなかったので、それほど期待せずにプレイしたのだが、ゲームの舞台となるナイトシティの背景表現にいきなり度肝を抜かれてしまった。元のTRPG用として作られただろう設定をすべて拾い上げたんじゃないかと思うほどの濃密さで、無機質な摩天楼に乱立する企業広告、アジアン風味溢れる退廃的な闇市や風俗街、奇抜なファッションにサイバーウェア(体の一部をパーツ化し着脱可能にしたもの)をつけた市民など、80年代SF的イメージの、皆が思う「サイバーパンク」のごちゃごちゃした世界観をそのまま描き出している。

ゲーム内で撮ったスクリーンショット。街角一つでこの作り込み。昼間はもっと人通りが多い。
この世界を自由に歩き回れるなんて。

この感動はグラフィックが綺麗というだけでなく、やはり「脳が情報に洗い流される」感覚がちゃんとあるからな気がする。W・ギブスンなどの書くサイバーパンク小説はとにかく難解で見慣れない言葉、理解に時間を要する言葉を頭の中で必死にイメージして組み立てながら物語を追うのが大変だったのだが、情報量の多いナイトシティの景色は、それ自体が情報として機能し、文章を読んだときの「脳があったまる」感覚を思い起こさせてくれるのだ。

今作の大まかなストーリーは、ナイトシティの裏社会で成り上がることを夢見て数々の仕事をこな若者∨(ヴィー)が、世界有数の軍事企業アラサカ絡みの仕事を依頼され実行したことで、自身の生命の危機、そして巨大な陰謀に巻き込まれていく……というわかりやすいもの。
プレイヤーは∨の素性や外見、初期ステータスをカスタマイズ可能になっている。素性は3種類あって、それぞれ冒頭のイベントが異なるが、メイン部分は同じようである。メインストーリーの流れは同じであるものの、とにかく一つ一つのイベントが長く、特にNPCとの会話シーンでは選択肢がこれでもかというくらい存在する。相手が一言二言相手がしゃべるとすぐ自分がなにか返答するフェーズになり、言葉や行動を選ぶ、あるいは選ばないでいると、当然それに対する相手の返答も変わる。気になることを追求するも、すぐに話を切り上げることも、選択肢によっては戦闘になることも、穏便に済ますこともできる。また、能力値によって取れる選択肢が増えたり限られたりすることもある。
この膨大な会話量がすべて日本語吹き替えで楽しめるというのも異常だが、これだけ膨大な選択肢があれば、同じイベントであっても人によって体験そのものが違ってくるだろうし、∨というキャラクターに愛着が湧いてくるものである。会話シーンでのカメラ視点(自分の見ている焦点)をぐりぐり変えられるものだから、なんとなく注視する場所を気遣ったりしてしまう。ある人物の葬式でスピーチをすることになったときは、しなくてもいいいのに話しながら弔客の顔をそれっぽく見回してしまった。
ちなみに一周クリアした状態でのプレイ時間は30時間弱。わりと駆け足で突き進んだつもりだが、どのシーンも濃密で、物足りなさなどはまったく感じなかった。

「大物になるのを夢見てたのに、今じゃその日を生きるのも精一杯だ」という趣旨のセリフが中々染みる。
画像:https://www.igdb.com/games/cyberpunk-2077/presskit

ゲームの仕様としては、一部ADVゲームのようなパートもあるが、基本的にオーソドックスなFPS。そこに革新的な面白さがあるというわけではない。しかし、既に書いたように、舞台背景やイベントの物量、作り込みは病的なレベルで凄まじい。これはVRで遊べたらもっと凄いんだろうなあという気がする。FPSであることも相まって、没入感というかこの手のジャンルで自分自身としてその場にいる体験は多くの他作品より頭一つ抜けている。膨大なイベントも多彩なキャラビルドも、根底にTRPGがあるということで、何度も遊べることやプレイごとに体験が異なる作りを目指したというのがうかがえる。そういう意味で一人称RPGを突き詰めたような作品であり、これは巨額を投じなければ作れないだろうと思った。
また、本作には俳優キアヌ・リーヴスがジョニー・シルヴァーハンドというキャラクター役として登場する。「JM」「マトリックス」の流れを組んでの起用なんだろうが、違和感なく世界に馴染んでいるから面白いものである。

PC(steam)
https://store.steampowered.com/app/1091500/Cyberpunk_2077/?l=japanese

※2020/12/27現在、PS4やXbox Oneなど1世代前のハードでの動作不良が問題となっており、現在ソニーストアからはPS5版も含めて購入できなくなっている模様。

Xbox Series
https://www.xbox.com/ja-JP/games/cyberpunk-2077