映画感想「ハッピー・デス・デイ」

2017年(日本公開は2019年)のアメリカ映画。
クリストファー・ランドン監督作品。
ジェシカ・ローテ主演。

自分の誕生日、大学生の主人公ツリーは仮面をかぶった何者かに殺される。
殺された瞬間、目覚めたのは同じ日の朝。殺される前の記憶もあり最初は戸惑うツリーだが、結局その日にまた殺されてしまう。
このループから抜け出すには、自分を殺す犯人を見つけ、犯行を阻止しなくてはならない! というお話。

happydeathday
© 2017 Universal Pictures

同じ日、同じ展開を繰り返すことで結末をどうにか変えようとあがく……といういわゆるループもの。
不気味な仮面をかぶった殺人鬼が何度ループしても執拗に主人公を追い回してくる、というところだけ切り取るとスプラッタホラーっぽいんだけど、観た感想としては犯人探しの要素が強く、またコメディ要素も多分にあり、ガチガチに怖がらせにくるホラー作品とはちょっと毛色が違った。

まず、主人公ツリーが素行も性格も悪いパリピ女、というホラー映画の主役にあるまじきタイプなのだ。
普通なら一番最初に殺される脇役ポジション。まあ、一番最初に死ぬので一応間違ってはいないのだけど。

朝、前日初めて会った男の部屋で目覚めるところから始まり、そこから殺されるまでの間にこれでもかというくらい他人から恨みを買っていることが明らかになるので、彼女が死ぬことへの同情を抱きにくいように作られている。むしろ安心して見ていられるというくらい。スプラッタ感も低めだし。

殺されたツリーは、また同じ日の朝、同じ男の部屋で目覚める。
記憶はある。目に映るものすべてに見覚えがあり、次の瞬間どうなるのかもわかる。そしてそれはその通りに再現される。動揺し、周囲を警戒しながら寮に帰ろうとするも、また殺されてしまう。

その後、ツリーは自分が同じ日を生きていることを徐々に受け入れ始め、対策を講じ、犯人探しを開始する。
しかしなかなかうまくいかない。何がダメなのか……と、試行錯誤しながら同じ日を繰り返すうち、ツリー自身の考えや行動に変化が生じていく。最初は印象最悪だったのに、周囲への態度が少しずつ変わっていくにつれて仕草もかわいく見え、彼女を応援したくなってくるのだ。
特に「どうせ死ぬし」と行動がハチャメチャになっていくところや、素直な気持ちに従って行動しつつも多少やけっぱちな感じがするなど、体を張って笑わせにくるところがよかった。

この、ループの過程で傲慢な人間が成長するという展開は、ビル・マーレイ主演映画「恋はデジャ・ブ」と同じである(というか劇中で言及している)。
「ハッピー・デス・デイ」は、嫌なヤツだった主人公への不快感が途中から好感に変わるという肝の部分をしっかり落とし込んでいるし、見終わってみるとすべてが模倣でなくちゃんとひとアクセント加えられている。

がっちがちのホラーではないけど、サスペンスとスクール・コメディで飽きさせないお得な映画。主人公が良い子ちゃんになってもそれほど性根が変わってなさそうなところもよかった。

ちなみに今作のキャラクターたちは続編「ハッピー・デス・デイ 2U」にも登場(自分は未見)。