映画感想「リング」

1998年の日本映画。鈴木光司の同名ホラー小説が映画化されたもので、ジャパニーズホラー映像作品のアイコンともいっていい「貞子」を生み出した作品。主演は松嶋菜々子と真田広之、監督は中田英夫。「テレビから這い出てくる貞子」のシーンがあまりにも有名だが、実際に見たのか憶えていなかったところ角川のYoutubeチャンネルで2週間限定公開されていたので視聴(現在は終了)。

ストーリー

1997年。「見ると一週間後に死ぬビデオ」という都市伝説が、学生たちの間でまことしやかに囁かれていた。テレビ局のディレクターを務める浅川玲子はそれらの噂に慎重な姿勢を示しつつも、女子高生から取材した話の一つが実際に新聞の小さな記事として載っているのを見つける。その記事によると男女の死因は心臓麻痺であり、つい先日変死体で発見された姪の智子とともに伊豆を訪れていたがわかった。
玲子は姪が一週間前に訪れたという伊豆のロッジへと赴き、管理小屋のレンタルビデオ棚から噂の呪いのビデオを見つける。姪の死の真相を知りたい彼女は、怖がりながらもロッジで呪いのビデオを再生。いくつかの意味深な映像の後、古い井戸が映り込む。映像が途絶えた後、真っ黒になったテレビ画面に映り込んだ玲子の背後には、白いワンピースをまとい長い黒髪を顔正面に垂らした女が立っていた。自身が姪と同じく「呪われた」と判断した彼女は、大学の非常勤講師で元夫の高山竜司を頼るのだが……というのが序盤。

感想

さんざんパロディにされネタ化した作品だが、やはり今観ても面白かった。
まずはとにかくテンポの良さ。これは「1週間後に死ぬ」というタイムリミット設定も相まって、とくに映画とも親和性が高い。映画が進むたびに日付がテロップ表示され、誰が見ても結末へ向かって進行しているのがわかるようになっている。とにかくテンポ重視で作られているのだ。また、本作は呪いのビデオの「呪い」と一週間という期限が終わったときの彼女の「登場」が目玉なのだけど、映画の大部分は呪いのビデオの映像を紐解きどうすれば呪いを止められるのかという謎解きに焦点があてられている。これが結構意外だった。ただ、タイムリミットが迫る中で真相を追っていく過程はちゃんと引きがあり、主人公にとっての不幸なども結末をより盛り上げるようになっている。
観終わった印象としては、すでにあまりにも有名なクライマックスのシーンは流石にインパクトは薄れてしまうものの、そこに至るまでの流れは常に緊張感もあったし、なんなら結末のほうが「ヒェッ」ってなる、ちゃんと「怖い」作品。それにしても物語の内容的に謎解きとビデオにまつわる陰惨な事件が主題のはずなのに、映画として語り草になったのはそれらや結末ではなく貞子の登場シーン(これは映画オリジナル要素らしい)がほとんどというのは、やはりキャッチーさというのは大事なのだなと感じさせられた。

貞子といえばこれ、というブラウン管テレビからの登場シーン。
映画のクライマックスの演出なのだが、ここまで認知度が高いともはや歌舞伎の見得のようなもの。

またWikipediaの記載によると、本作は原作の設定からかなり手を加えられているとのこと。原作は未読なのでそれに関して特に思うところはないが、結果的にテンポの良さに繋がっている。ただテンポを重視するあまり、登場人物に原作にはないあまりにも特殊な能力を持たせてしまったという話は相当大胆。まあそれでも個人的には萎えてしまわないギリギリのラインかなとも思うので、その点でもやはり巧さを感じる。

まとめ

というわけで、説明不要なジャパニーズホラーの「古典」レベルの名作。無駄のなさとテンポの良さなど、件の有名シーンだけでなく映像作品として優れていながらも脅かしではない怖さと、いい意味で後味の悪い余韻がある。作品時間の短さを考えても非常に満足度が高かった。
本当は限定公開期間中に記事をあげられればよかったのけど、観たタイミングが終わり近かったのでこのタイミングになってしまいました。申し訳ない。