ゲーム感想「Hades」

Supergiant Games開発、販売のローグライク・アクションゲーム。発売、配信はプラットフォームによって異なり、2018年からPCでアーリーアクセスが始まり、2020年にリリース。当時は日本語未訳だったが、その後2021年6月にNintendo Switchで配信されたのと同時に日本語翻訳された。Play StationやXbox Seriesなどにも近々発売、配信予定とのこと。

「Hades」の世界観はギリシア神話をモチーフにしており、主人公は冥界の神ハデス……ではなく、その一人息子ザグレウス。ストーリーは、気ままな性格のザグレウスが厳格な父と彼に支配された冥界での生活に窮屈さを感じ、家出を企て地上を目指す、というシンプルなもの。
冥界(=地獄)が舞台ながら雰囲気はそれほどおどろおどろしくはなく、拠点となるハデスの館の住民も基本的には地獄ライフを満喫している様子。ちなみに、主人公の脱出は館の全員が知っており、「ハデス様の息子がまた変なことをやっている」程度の認識。その中に当のハデス神も含まれており、やられて館に戻るたびに「無駄なことはやめたらどうだ?」と嫌味を言ってくる。

主人公ザグレウスの父であり、ゲームのタイトルにもなっているハデス。
館に戻るたびに温かい言葉をかけてくる。

登場するのは冥界ゆかりの人物だけではなく、ゼウスやポセイドンといった、オリュンポス(地上)の神々も登場する。地上の神々はザグレウス以上に奔放で、彼の家出を面白がってか道中で力を貸してくれる。各キャラクターとの会話パターンが非常に多いのも好印象。

本作はローグライクジャンルであり、遊ぶたびにダンジョンの形や内容が変化する自動生成型のゲームとなっている。プレイヤーは各部屋で敵を殲滅し、報酬を手に入れて次の部屋へ進む、というのを繰り返す(敵のいない部屋や、イベントが発生する部屋もある)。基本的に一度訪れた場所に戻ることはできない。ひたすら部屋を進みながら報酬を手に入れたり自身を強化したりして、エリアのボスを撃破し次のエリアへ……という流れ。
特に強化については、先述したようにオリュンポスの神々が力=「功徳」を授けてくれることがあり、この功徳次第でゲームプレイが大幅に変化するようになっている。わかりやすいものとして、プレイヤーの行動には通常攻撃、特殊攻撃、魔弾攻撃(飛び道具)、ダッシュ(回避)など共通アクションがあるのだが、神々の功徳によって特殊効果が付与されると、それらの見た目が大きく変化する。たとえば、アテナなら敵の投擲攻撃を反射するバリアがプラスされたり、ゼウスなら電撃をまとわせ、付近の敵に一部ダメージが伝播したりといった具合。多くの神々から功徳を得て、常にエフェクトを撒き散らす状態になると非常に爽快だ。もちろん目に見えない能力上昇の功徳も存在し、そちらも重要である。

ポセイドンの功徳で、特殊攻撃に相手を押し流す効果が付与された状態。
動画などで確認していただきたいが、エフェクトアニメーションはどれもかなり綺麗。

ローグライクジャンルなので、当然死ねば冒険で手に入れたお金や功徳は全て手放すのだが、鍵など一部持ち帰れるものもある。それらをハデスの館で使用することで別の武器をアンロックしたり、プレイヤーのステータスや自動回復能力などを強化したり、ネクタルという酒があればそれを各キャラクターや神々に献上することで親密度を上げたりといったことが可能。こうして冒険と死を繰り返しながら、徐々にプレイヤーの能力などを底上げして地上を目指す、というのがゲーム全体のサイクルになる。

Supergiant Gamesは2011年の「Bastion」に始まり、「Transister」「Pyre」など、一貫して斜め見下ろし型のアクションやRPGを作り続けている。今作もご多分に漏れずグラフィック、サウンドともに質が高く、特に直感的でスピーディーな操作感が触っていて気持ちいい。まさにお家芸というべき安定感である。
さらに「Hades」はそれだけでなくバランス構築が上手いというか、ランダム性の一言で片付けられない丁寧さがあるように感じた。功徳や道中の強化度合いによって難易度は異なるものの、基本的にはプレイヤースキルによるところが大きく、ランダムによるプレイの多様性はあれど難しさは一定に落ち着いている。その中に各功徳のレアリティやレベル(レアリティが高い状態の方がレベル上昇による恩恵も高い)を鍛えていく線の遊びや、「この功徳で状態異常にしてこの功徳で大ダメージ」といった組み合わせの遊びがあり、それらがプレイのたびに生まれるのだ。報酬の多くは取得時に複数提示され選択ができるので理不尽さは少ないし、そうしたランダム性に対しても、プレイヤーは「レア出現率上昇」などのアクセサリや能力で多少介入できる。またプレイが固定化しないように、未入手の功徳などを揃えることで報酬がもらえるといったサブクエスト的なものもあり、そういった面からもリプレイ性は高いと感じた。

というわけで、プレイ感やヴィジュアル、ストーリーなど全方位にクオリティの高い作品。基本ステータスを上げていけば難易度を下げることができるので、難しめではあるがかなり間口は広いと思う。
ただ、安定してクリアができるようになってくるとボスのバリエーションなどに多少物足りなさは感じた。地上への到達を果たすごとにメインストーリーが進行し、最後は良い終わり方をするのだけど、その途中の話にもう少し引きが欲しかったかも。とはいえ、全体としては上質でおすすめできる作品。

画像:© 2020 Supergiant Games

公式サイト(Supergiant Games)
https://www.supergiantgames.com/games/hades/

PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/1145360/Hades/

Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000033130.html