ゲーム感想「モンスターハンターライズ」

2021年3月に発売された、カプコン開発のハンティングアクションゲーム。
いわゆる「モンハン」として、あまりゲームをやらない人にも知れ渡っているであろう人気シリーズの最新作である。シリーズとしては2018年発売の「モンスターハンターワールド」からシステム部分が刷新されており、今作もそれを受け継いでいる形となる。自分は「ワールド」未プレイだったので、かなり新鮮な状態でプレイできた。

今作「ライズ」は和風テイストで統一されている。拠点であるカムラの里は山麓の村っぽい雰囲気、新登場のモンスターやフィールドに存在する環境生物などは日本の妖怪をモチーフとし、ストーリーの鍵となる「百竜夜行」といったシステムなど、世界観的にもかなり力が入っている。
まずグラフィックについて、、正直ここまできれいだとは思っておらず驚いた。自社製のREエンジンというゲームエンジンで作られているそうだが、スペックや処理速度の話になると他の現世代機に比べて分が悪いSwitchでありながら、テレビに映してもそれほど見劣りすることもなく、なにより読み込み速度もあまり気にならない。
また和の趣のある音楽も雰囲気が好印象。元々モンハンシリーズの音楽は重厚なオーケストレーションでクオリティが高いのだが、ゲームを盛り上げることに徹しているせいかそこまで楽曲が主張してこない。女性ボーカルがモンハン語(?)で歌う拠点BGMも、インストとして聴くことができ耳障りにならず良い感じ。

ゲーム内のスクリーンショット。拠点となるカムラの里。
瓦屋根や桜など、和の情緒溢れる町並み。お団子屋さんもある。

「モンハン」といえば、1にも2にも素材集めである。プレイヤーはハンターとして十種類以上の武器から一つを選び、それを背負って拠点でクエストを受け、モンスターを狩猟しにフィールドへ繰り出す。モンスターを倒しその素材を剥ぎ取ることで、それらを加工しさらに強力な武器や防具を作ることができる。そしてまたモンスターを狩猟しにフィールドへ……という、基本的にはどのシリーズもその繰り返しである。
文字にすると果たして本当に面白いのかという気もしなくもないが、「モンハン」のこのサイクルは恐ろしい中毒性を持っている。その要因として、繰り返すことによるプレイヤースキルの向上と、全体的なゲームスピードの遅さが挙げられると思う。
「モンスターハンター」シリーズはモーション一つ一つが丁寧に作られとにかく挙動一つ一つが重く、もっというともっさりしている。それは巨大な剣を振り下ろすときの重さなどの表現力にプラスに作用しているが、何かの動作中にプレイヤーが別の動作を入力しても、動作が終わるまでは受け付けてもらえない。結果、相手が攻撃を仕掛けてくるとわかっても別の動作中で避けられなかったり、攻撃を入力した途端相手が移動してしまい派手に空振ったりといったことが起こりやすい。動作が遅いのはクエストの対象となる大型モンスターも同様で、一体一体がとても丁寧に作られ、攻撃パターンなども独特なものが多い。
遅い同士の戦いなので最初こそ多少ストレスに感じるが、相手の動きが遅いということはそのぶん行動を見極めやすいということである。そのため、何度も繰り返していると予備動作だけで次にどんな動きをしてくるか、どの動きに隙があるかなどがわかり、プレイヤー側の動きだけがどんどん洗練されていきやすくなっているというわけである。
また、モンスターの素材は一体につき何種類も存在し、その中でもめったに出ない「逆鱗」や「宝玉」といったレア素材も存在する。これらは運の要素が強いが、モンスターごとに設定された「頭部」「腕」「尻尾」などを狙って攻撃することで特定の素材が出やすくなるというメリットもある。そうした「成長と収集、強化」を、知り合いのプレイヤーとワイワイ競ったり比べたりしながら遊べるというのが、何度も繰り返し遊ばせてしまう「モンハン」シリーズの魅力だと思う。

とはいえ、実際のところはシリーズ新作が出たとしても毎回新しい要素だけで上記の遊びを形作っているわけではなく、十種類以上の武器も一部の大型モンスターも過去シリーズからの登用だったりと、毎回何もかも新鮮な気持ちで遊べるわけではない。
そのため、自分も毎シリーズ遊ぶというよりは、何作かに一回ぐらいの感じで遊んでいる。ちなみに前に遊んだシリーズは「モンスターハンター4」なので、フィールドエリアがシームレスで繋がっている「モンハン」は今作が初ということになる。やはりというべきか、エリア読み込みがないだけでだいぶ快適なので順当なパワーアップだといえる。そのほか、ピッケルや虫取り網、研石なども消費アイテムでなくなるなど、「ワールド」で刷新、簡略化された部分をそのまま継承しており、かなり遊びやすくなったと感じた。
また、今作は狩猟に連れていける「オトモ」にガルクという犬っぽい生物がいる。このガルクは一緒に戦ってくれるほか、背中に騎乗することが可能。素早く移動することができるのだが、この状態で使えるアイテムなどがあり、素早く移動しながら回復薬を飲んだり、「移動しながら砥石で武器を研ぐ」といったことも可能。
ガルクはジャンプすることもでき、後述する「翔蟲(かけりむし)」を使うことも想定してか、今作のフィールドエリアはかなり高低差があり、探索し甲斐がある構造になっている。

そして、個人的にもっとも良いと感じたのが先述した「翔蟲(かけりむし)」という新しい仕様で、鉄の糸を出す蟲を使っての移動方法である。
蟲が決まった場所に移動してから、硬い糸でプレイヤーを引っ張り寄せる。移動のイメージは、カプコン社製でいうなら「ロスト・プラネット」シリーズのアンカーアクション、他社なら「ゼルダの伝説」シリーズに登場するフックショットなどと同様の挙動だが、それらがアンカーやフックを引っ掛ける何かしらの「場所」に当てなければ発動しないのに対して、翔蟲は蟲自体を支点とするため、どこにいようと発動することができる。これによって、従来作品よりも格段に自由度の高い移動ができる。一気にモンスターとの距離を詰めたり、攻撃の回避に使ったり、またやられ吹っ飛びの受け身に使ったりと、それまでの重みのあるアクション性をあまり壊さず、機敏な動きができる新しい遊びになっている。これは今後のシリーズのスタンダードになって欲しい。
余談だが自分はカプコン社開発の「ロスト・プラネット」シリーズが好きで、この翔蟲アクションを見たとき「これはアンカーでは?」と思ったのが購入の大きなきっかけだったりする。

ゲーム内のスクリーンショット。ちょうど「翔蟲」を使った瞬間。
移動に回避に攻撃にと大活躍。画面中央下のゲージが溜まっていないと使えない。

もう一つの新システムである「操竜」は、大型モンスターに乗って操るというシステム。基本的にフィールドにはクエスト対象以外の大型モンスターも徘徊しており、たまに大型モンスター同士で縄張り争いを繰り広げることがある。
大型モンスターがダウンするなど一定の条件可で操竜が可能で、プレイヤーは大型モンスターを操って別の大型モンスターを攻撃することができる。大型モンスターに乗っての怪獣バトルのような殴り合いは、それまでの敵の攻撃を回避するヒリヒリした戦闘との良いメリハリになっており、最後には鉄蟲の糸で縛り付けるのでどのような結果になってもプレイヤーにとってプラスである。もちろん、うまくモンスターを攻撃すれば落とし物(収集品など)をばらまくので、テクニック次第で大きな収穫になる。

上記2つのシステムによって、戦闘面では従来作品の良さを消さずに新鮮味が出ていると思うが、今作ならではのシステムとして「百鬼夜行」ならぬ「百竜夜行」というものがある。これはフィールドへ繰り出す普段のクエストと違い、拠点の砦にバリスタや大砲などを設置して、迫りくる大型モンスターを撃退していくタワーディフェンス要素のある遊び。いつもは数人がかりで戦う大型モンスターが群れを成して攻め込んでくるという、だいぶ毛色の違う遊びとなっている。
タワーディフェンスというと攻め込まれると一気に決壊してゲームオーバーという印象があるかもしれないが、そこまで厳密なものではなくわりと大味で、最後の門が破壊されない限りは持ち直すことが可能。防衛施設を使って攻撃するほか、「反撃の狼煙」が上がっているときはプレイヤーの攻撃力が何倍にもアップするため、直接モンスターを攻撃するといつも以上のダメージを叩き出して大型モンスターを簡単に撃退することができる。遊んだ印象として、一人より多人数(できれば気心知れた人間)の方が、声をかけあっての連携などができて面白いと思う。

というわけで、従来の面白さに新鮮な要素が加わっているほか面倒な要素なども減っており、シリーズの面白さを保ちながらクセが少なくて遊びやすいと感じた。スイッチなので本体を持ち寄って遊ぶという「ワイワイ感」も味わうことができるし、もちろんインターネットプレイにも対応している。
久しぶりにやる「モンハン」として充分おすすめできるし、難易度的にもシリーズの中では遊びやすい。特に繰り返しになるが「翔蟲」システムがとにかく気持ちよく、重く遅いという印象をけっこう緩和していると思うので、特にそういう印象を持っている方に遊んでもらいたい。

公式ページ
https://www.capcom.co.jp/monsterhunter/rise/