ゲーム制作話2「iPhone用ゲーム公開までの流れ」

実際にスマホゲームを制作するとなったときに、一体どこが「ゴール」だと思いますか? ゲームの中身を作る、というのは想像しやすいと思いますが、スマホで遊べるゲームを公開する場合、それ以外にもやることがあります。
超ざっくりと分けると、

1:ゲームの中身を作る
2:実機(スマホ)で遊べるようにする
3:ストアに申請、公開する

といった感じでしょうか。本当はさらに宣伝などがこの後に続きますが一旦ここまでやれば、ストアに公開され自分以外のスマホでも遊べるようになります。個人開発の場合、当然これをすべて一人で行うことになります。さて、続けて質問になりますが、パッと見た感じだとどれが「大変そう」だと思いますか? これは人によって違うと思いますが、私の答えは「全部」です! 正直な話、私はこのすべてで躓いています。
というわけで、今回はiPhone用ゲーム制作を公開するまでの具体的な流れと、どこで躓いたのかをご紹介したいと思います。技術的な話というよりは、これからスマホでアプリ制作したいというときに、私が最初に知っておきたかったことをまとめたような内容です。

1:ゲームの中身を作る

「ゲーム制作」といったら大部分がここに時間と労力を費やすものだと思います。
前回の「ゲーム制作話1」でもお話ししましたが、私は本来作りたいものから一旦撤退してスマホゲーム制作に着手しました。作るものの難易度を格段に落としたというのもありますが、はっきりいってこの部分は、この後待っている工程に比べると比較にならないくらい楽しいです。
ちなみに開発環境はUnity、プログラミング言語はC#を選びました。Unityの良いところは、ネット検索で大量のHowTo記事が出てくること、これに尽きます。やりたいことの答えに限りなく近いものがネット上にごろごろ転がっているわけです。もちろん100%望んだものが完パケで出てくるわけではありませんが、そこから自分で構築するするための取っ掛かりには充分なり得ますし、書いたソースコードの間違いなどの参考にもなります。
決してサクサク進んだわけではなく躓きもそれなりにありましたが、制作の中で成長しているという手応えが感じられ、今後続けていく上でも無駄にならないであろう経験なので精神的には相当楽でした。

2:実機(スマホ)で遊べるようにする

ゲームがある程度できたら、実際にスマホで遊べるかを試してみます。開発環境(パソコン)でうまく作れたものでも、実際のスマホで動作や画面レイアウトがおかしくなるというのは予想できたので、中身を作る過程の途中からはパソコンだけで作ってスマホで確認し、完成品にブラッシュアップ……していこうと思いました。
ところで、私はスマホはiPhoneを使っていますが、パソコンはWindowsを使っています。私は知らなかったのですが、実は「WindowsでiOS用アプリ(ゲーム)の開発」は、実は途中までしかできないのです。ちょっと専門的な話になりますが、UnityはWindows版Mac版に関わらず作ったものをiOS用にビルドができる機能があります。これのせいで勘違いしていたのですが、実はそれは「iOSの開発環境で読み取れる用のビルド」であり、実際はそこからiOSの開発環境でiPhoneを含めたiOS実機用のビルドを行わないといけません。要するに、Windowsだけでは実機用のビルドができず、MacパソコンやiPadといったMac機器がどうしても必要になるのです。
私はその時点でもちろんMacパソコンは持っていませんでした。抜け道がないものかとネット検索しまくったものの、知識のない私でもできる安全な方法というものはどうやらなさそうでした。ここでiOSではなくAndroid用アプリに切り替えるという選択肢もありましたが、どちらにしろAndroid端末がないので購入しなくてはなりません。結果、普段使いするiPhoneで確認できた方がよいだろうということで勉強代と割り切ってM1 Mac miniを購入することにしたのです。
機材を買ったはいいですが、それだけで簡単に実機で遊べるようになるわけではありませんでした。Windowsとは違うMacのインターフェースに文句を言いながら、WindowsのUnityでビルドしたものをGoogle Driveを通してMacに移動させ、「Xcode」というiOS開発環境でビルドを行ったのですが結果は失敗。またここから原因究明(ネット検索)の日々が始まります。原因はどうやら、私が行ったWindowsでのiOS用ビルドには実機ビルドに必要なプログラムが揃っていない状態だったからのようです。さらにXcodeにはたくさんの設定があり、ビルドを成功させるにはそれを正しく合わせなくてはなりません。これは私のような知識ゼロの初心者にはかなりハードルが高い作業でした。
ネットで調べようにも、Windowsパソコン+UnityでiOSアプリ開発を行うというケースはまったく見ないわけではないもののそれほど多くはなく、その通りの手順でやってみたら成功せず、記事を見直すと実はMacのUnityだったみたいなことが結構あり、解決するまでに相当苦労しました。

3:ストアに申請、公開する

「ゲームを作った」「実機でも動いた」となればいよいよストア申請のフェーズになります。ここが終了すれば、作った本人以外の人もAppStoreでゲームをダウンロードすることができるようになります。
これも私はけっこう軽く考えていて、Youtubeで動画を公開するくらいのイメージだったのですが、AppStoreで作ったアプリを公開する際には「Apple Developer Program」に登録する必要があり、それには年会費が必要になります(2023年現在年額99ドル)。また、公開にはプロモーション用のスクリーンショットや公開するアプリの内容、利用規約や個人情報の取扱いといったプライバシー・ポリシー、さらにサポートページを作成する必要もあります。
正直面倒だなぁとも思ったのですが、考えてみればアプリの中には無料公開だけでなく金銭のやり取りが必要になるものもありますし、お手軽&誰でもウェルカムだと問題が多発するであろうことは明らかです。ストアに公開する以上どんなものであっても販売者、サービス提供者という立場にならないといけないので、この対応は真っ当なものでしょう。ただプライバシー・ポリシーや利用規約なんて今まで「同意する側」でしかなかった私は、これらを作成するのにも大変苦心しました。アプリを公開するにあたりそうしたサービス提供者としての自覚を持たなくてはいけないという点に加え、公開するアプリの内容についての審査をパスしなくてはならず、Apple側が提示する設問や機能にアプリが抵触しているか、といった回答が必要です。また、実機のビルドとは別に、ストア公開をするためにゲームをアーカイブ化しなくてはならず、そこでもまたエラーが出る可能性があります。

ちなみにですが、個人でアプリを公開する場合、法人でない限りはAppStoreでは販売者名に実名が表示されます。正確にはApple Developer Programに登録した名前になるのですが、ここでしっかりと身元照明などを行うため、実質ネット上で使用しているハンドルネームや芸名、偽名のようなものは使用することができません。
これを回避するには、最初に書いたように個人事業者として法人になるか、もしくは個人事業者として屋号を商号登記→その屋号でDUNSナンバーという世界標準の企業識別コードを発行してもらえれば、それらの名前で公開することができるそうです。ただし名前を出したくないというだけ理由で法人化するのは税制面などよく考える必要がありますし、屋号の商号登記やDUNSナンバー発行にもそれなりにお金がかかります。私も最初は悩みましたが、まあ別にいいかということで現状はそのままにしています。

おわりに

以上のことをすべてこなし、Apple側の審査も通ったところでようやくゲームの公開となりました。
全体を通して思うのは、「お金がかかった」ということと「実際の内容(ゲーム)を作ること以外の作業が、それと同等かそれ以上に時間がかかった」ということです。前者に関しては勉強代として割り切ることができるのですが、後者は正直自身の目的と照らし合わせるとそれほど有用でなかったと思います。というのも、ゲームの中身を作る過程で得た知識やスキルは今後他のゲームを作るときにも役に立つ可能性が多いですが、実機で遊べるようにするという部分で得た知識は、iOSアプリを継続的に作るつもりがない私にとっては正直かけた時間や労力に対して割に合わない経験だったと感じています。もちろん無駄なことなどないという考え方もできるのですが、iPhoneをプラットフォームに選んだ時点で「これをやることで得られる知識や技術は本当に必要なのか」という視点が抜けていたかなというのは反省もあります。

そんなこんなでどうにか制作したiPhone用ゲーム「Sannana」、公開中です。