ゲーム制作話1「まずは身の丈にあったゴール設定を」

最初に何を書こうかと思ったのですが、まずスマホゲームを作った理由というか、そこに至る経緯を書こうかなと思います。

個人開発でゲームを作ることを真面目に考えたとき、本業の片手間でやることや開発の大部分を自分でやることを考えるとそれなりの時間を費やすことになります。もしそれがちゃんとゲーム会社としてビジネスを成功させている企業の製品と同じ土俵で張り合おうとすると、よほど優れたアイデアでない限り普通に数年単位になりかねないと思います。経過報告などは別として、その長い期間、日の目を見ることなく黙々と制作を続けられるかというとそれは並大抵のことではありません。なかにはそういうことをやり遂げる方もいますが、とても精神的に厳しいものだと思います。
私が作りたいと考えているものは2Dアクションゲーム(メトロイドヴァニア)だったのですが、プロトタイプの作成を目標にして取り組んだもののその時点で躓きが多発しました。スケジュール通りにまったくうまくいかず、成果的にも満足のいくものではありませんでした。実際に挑戦することで、今は作りたいものを作る能力がないということを思い知ったわけです。結果的にこのままこれを作り続けていてもいつ完成するかわからないと判断し、一旦こちらは撤退し別のものを作るというように方針転換するところから開発はスタートしました。

特に痛感したのはC#プログラミング知識のなさです。複雑なものを組み立てていくたびに、基礎的な考えがわからないまま進めているという感覚が強くなりました。基礎ができていないと簡単な改造や機能の追加にすら苦戦し、時間を取られます。プログラミングはいわばゲームの内部機関であり、ここがガタガタの間に合わせになると、後々苦労することは明白です。これでは駄目だろうというのが判断の決め手でした。
そこで実際に何を作ろうか考えたときに、基礎的なプログラミングでできるもの、かつ可能な限り簡単な仕組みにすることにしました。とにかく個人で一つゲームを完成させる経験を積みたいという思いが強くあり、また完成させるだけでなく何らかのプラットフォームに乗せるという目標にしました。公開するだけであればそのままブログに乗せるといった方法もありますが、とりあえずどんなものであっても人目に触れる「商品」にした方が「終わった」感触を得られると考えたのです。とにかく考えうる限りハードルを下げ、かつ「完成させた」手応えが得られるように、という事を考えた結果、スマホ用のゲームを作るということになりました(実はこの「スマホ用ゲーム」という判断がさらなる躓きを生むことになるのですが、それは別の機会にお話しできればと思います)。
またハードルを下げる方針の中で、「ボリューム設定」や「言語設定」や「セーブ&ロード」といった遊び以外の機能をちゃんと実装することにしました。これは規模に関わらずどんなゲームでも必要になるものなので、この先でも経験として役に立つものだと思います。遊び部分は超簡単に、しかしそれ以外の部分は最低限の体裁を整える、というのを今回自分がチャレンジすべきハードルとして設定しました。結果的にこの判断は良かったと思います。

ここまで振り返って思うのは、まず個人開発においては作りたいものと実際に作れ「そう」なもののギャップを慎重に見極めないといけないということです。当たり前のように聞こえますが、パッションだけで突っ走ると私のように返り討ちに遭う確率が高いでしょう。そして自分自身のスキルアップとモチベーションの維持について、いっそう自覚的になるべきだと思います。開発スキルがアップすれば作れるものの幅が増えていきます。そして、モチベーションは開発者のエネルギーと言い換えてもよいです。これから作ろうとするものに対し、自分の経験になったりスキルアップが図れると考えられたら、それはモチベーションに繋がります。またモチベーションを保つには、もう何度か書きましたが「区切りがある」ことが大事だと思います。終わりがない、また終わりがとてつもなく先というのは、モチベーションを消耗するものです。
身の丈に合ったゴール設定とは、作れそうであることというのとは別に、上で挙げた「スキルアップ」と「モチベーション」、この2つを効率的に維持できることが重要なのではないか、という話でした。いきなり失敗談からというのもお恥ずかしいのですが、これから始める方への警鐘になれば失敗した甲斐もあるかな、ということで。

というわけで、私が制作したiPhone用ゲーム「Sannana」公開中です。