ゲーム感想「Axiom Verge 2」

2021年8月に配信されたメトロイドヴァニア。Thomas Happ Games開発、販売。Thomas Happ氏による個人開発作品で、プログラム、アート、音楽などすべてを一人で作り上げた2015年の「Axiom Verge」に続く2作品目。配信時PC版はEpic Game Store限定だったそうだが、2022年8月にSteamで配信されたのでプレイ(実は2021年時点でNintendo Switchでも配信されていたのだがまったく知らず、結果1年経ってから遊ぶことになってしまった)。

あらすじ

近未来。主人公はインドラ・チョーダリーというIT億万長者で女性CEO。彼女は旧知の仲でありライバル経営者でもあったエリザベス・ハモンドが南極で失踪した機会を逃さず、ハモンド・コーポレーションを買収し排除に成功する。インドラの目的は、ハモンド・コーポレーションが世界に革命をもたらした「アンシブル」というゼロ遅延通信技術だった。彼女がアンシブルのプロトタイプを動かしたところ、そこにインドラ宛てに「娘と再会したければ南極に来い」というメッセージが送られてくる。実はインドラにはサマーラという娘がいたが、何らかの理由により行方不明となっていたのだ。
インドラはハモンドが調査団ごと失踪した南極のジョーンズ基地を訪れる。無人の基地内で、動くリフトを発見し起動させると、次の瞬間彼女は地球ではない別の世界に飛ばされていた。異世界にはハモンド調査団の生き残りがおり、帰れなくなってしまったことがわかる。この後、インドラは「アーム」と呼ばれるマシンの知能集合体、アマシラーマと出会い、彼女に導かれながらも異世界を冒険していく……というのが導入部分。

異世界に迷い込んだのはインドラだけではない。
同じ世界からの漂流者たちもおり、数少ない同胞として情報を提供してくれる。

感想

前作「Axiom Verge」もメトロイドヴァニア・ジャンル、しかも個人制作のゲームとして非常に高い完成度だったが、その高いクオリティは今作も健在である。さらに「Axiom Verge」シリーズとしての方向性が定まった形になっていると感じた。
まず、前作での主人公の攻撃手段は「メトロイド」のように弾を発射するシューティング系が主だったが、今作ではピッケルや斧などの近接武器がメインになり、遠距離武器はブーメランなど限られたものに変更となった。前作の舞台は機械と有機物が融合したような世界観で、元の文化形態がわからないほど侵食されていたが、今作はその部分がかなり鮮明に表現されている。中央アジア風の建造物が多く残され、ボーカルを多用した楽曲もそれを思わせるものが多い。偉そうな物言いになってしまうが、モチーフの違いに関わらず明らかに開発者のグラフィック技術やBGM制作の表現力がアップしていると感じた。

背景の意匠などからも、どういった神話なのかなど想像させる。
音楽も相まって雰囲気がとてもよい。

そして、今回最も前作との、またその他のメトロイドヴァニアとの違いを大きく感じたのは、ほとんどの「ボス」との戦いをスルーできる点。本作の一部の敵は見ているだけでワクワクするような巨大なものがおり、それが何の前触れもなくマップを徘徊しているのが個人的にはツボなのだが、プレイヤーは必ずしもそれと戦わなくて良い仕様となっている(もちろん戦おうとするとそれなりに歯ごたえがあるし、倒すとご褒美もある)。ボスバトルを強制しないということは、マップの探索に重きを置いていると受け取ることができる。死に対するペナルティもなく、リトライもすぐできるので戦闘が苦手な人には嬉しい反面、そちらを楽しみにしている人にとっては緊張感がなく、好き嫌いが分かれるところかもしれない。
また、キャラクターの成長は「アポカリプス・ノード」という成長ポイントを入手することで戦闘パラメータやHP上昇など自由に振り分けることができるのだが、戦闘、攻略のどちらにおいてもハッキング能力が重要となっている。ハッキングは本シリーズを象徴するシステムで、本作でも機械系の敵の行動を変化させたり、設備にアクセスしたりといった際に使う。状態変化と捉えるとありふれた感はあるが、世界観を絡めてそれをうまく表現している。

もう一つ、本作の主な要素としてマップが「オーバーワールド」と「ブリーチ」という二層になっている点があげられる。2つの世界は重なっており、プレイヤーはドローン能力を駆使することで裂け目などから2つの世界を行き来し、単一の世界からは到達できない場所にも到達できるようになるのだ。わかる人には「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」の「マジカルミラー」のギミックをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。このゲームのマップ探索において大きな役割を果たしており、裂け目の位置を動かすなど独自の要素も加えていて面白い。

1でも登場した、ブリーチ(狭間世界)の内部。
ドットの大きさやデジタル感強めなBGMなど、表現を意図的に変化させている。

ちなみにだが、設定の多くを前作と共有しており、それらはストーリーと密接に絡んでいる。元々前作も設定など多くを語らずに謎を残すゲームだったため、前作のファンに対して想像や考察を促す作りになっている。個人的には、主人公の協力者のように振る舞うマシンとのやり取りが、信用できない神(あるいは悪魔)と取り引きするような感覚があってけっこう好きで、これもシリーズの味だと思っている。

まとめ

というわけで、シリーズとしてさらに個性の強くなったクオリティの高い個人制作メトロイドヴァニア。相変わらず本作のマップ設計はよくできており、パズルを解いていくような面白さ、ヒントの出し方の妙や、攻略とは関係のない裏技コマンドといった遊び心、さらにはバグのような動きで強引に障害を抜けられる懐の深さ(?)まで、やりごたえ十分。昨今の時短ブームや消費の加速化などに知らず知らず感化されていたような気がしていた自分は、本作で「迷う、探す、試す」楽しさをしっかり思い出させてもらった。おすすめ。

因みに少々のネタバレ&アヤシイ挙動の紹介になるが、人間状態での「壁上り」スキルとドローン状態での「浮遊」スキル、さらにドローンと人型形態の「形態変化」スキルがあれば、壁上り→ジャンプしてすぐドローン化、浮遊→人間に戻り壁上り→……で壁上りの耐久ゲージがリセットされるので、垂直な壁なら制限なく登ることができる。浮遊はなくてもいけるかもしれない(自力で発見したテクニックなので嬉しくて掲載w)。
ご利用は自己責任で。

画像:© 2021 Thomas Happ Games.

PC(Epic Game Store)
https://store.epicgames.com/ja/p/axiom-verge-2

PC(Steam)
https://store.steampowered.com/app/946030/Axiom_Verge_2/

Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000026129.html